事業環境の基盤整備

石油化学工業協会(以下「石化協」)は、我が国の石油化学産業の持続的発展を目指し、中東、米国や中国の石油化学に対する国際競争力を維持および強化するために、国内での「事業環境の基盤整備」を積極的に推進することを重点課題として、以下のとおり事業活動を図っている。

1.石油化学産業における環境整備等検討会(以下「石環検」)

我が国石油化学産業は、国内需要の縮小、輸出市場での中東をはじめとする新興勢力、シェールガス由来の石油化学製品で復活を果たした米国勢、さらに巨大な石油化学製品需要を抱え大規模な新増設を続ける中国などとの競争激化が起きており、アジアにおける事業環境は大きく変化している。
その変化に対応し、持続的成長を図るため、石油化学産業をめぐる環境整備を行う必要があると考え、2010年10月に当時の高橋石化協会長(昭和電工社長)の発案により石化協「運営委員会幹事会」の元に臨時の組織として『石油化学産業における環境整備検討会(略称:石環検)』を設置し、以下のとおり3次にわたり活動を行い、「要望書」および「答申」を発表した。

(1)第1次石環検(2010年10月~2011年11月)

2010年10月、石化協はわが国石油化学産業の空洞化を阻止するために立地競争力の保持強化が不可欠であり、必要な環境整備を進めるべく、協会内運営委員会幹事会の元に「石油化学産業における環境整備等検討会(略称:第1次石環検)」を設置した。同検討会は、約10回の検討会を開き翌2011年11月に「要望書(案件:5件)」をまとめ、枝野経済産業大臣(当時)に「要望書」を提出し必要な措置を講ずることを要請した。

<要望案件>

  • 研究設備に係わる規制緩和要望
  • 電力の直接供給に関する要望
    ①自己託送制度の利用条件の緩和
    ②コンビナート内特定供給制度の規制緩和
  • 企業間連携の環境整備として、有限責任事業組合(LPP)の改善
  • 大規模コンビナート特区の認定
  • タンク、ボイラー設備に関しての自主保安特区制度の導入

(2)第2次石環検(2014年6月~2016年6月)

2013年7月、内閣府は石化協「第1次石環検」が2011年に要望した「研究設備に係わる規制緩和要望」を取り上げ、翌2014年6月に開催された規制改革会議「規制改革実施計画」に盛り込み、閣議決定した。石化協は、当該閣議決定を受けて研究設備の規制緩和審議への対応を図ると共に速やかな実施を求めて「石環検(第2次)」を再開し、支援活動に入った。
さらに、2014年11月、厳しいグローバル競争に直面し供給過剰構造に陥っている石油化学産業について、経済産業省が「産業競争力強化法第50条」に基づく調査を実施し調査結果を公表した。当該文書で示された課題について、第2次石環検の「追加テーマ」として取り上げることになった。
第2次石環検では、10回を超える検討会を開催し、「4項目の提言」にまとめた上、2016年6月に「中間答申」として、経済産業省/糟谷製造産業局長に提出した。

<提言案件>

  • 研究(試験)設備に係わる高圧ガス規制の緩和
  • 人材の育成
  • 集約・統合時の手続きの明確化・公平性の確保
  • 地域との連携

(3)第3次石環検(2017年4月~2018年4月)

2017年3月、政府が成長戦略の一環として取り上げた「働き方改革」において、時間外労働時間の上限規制導入が決まり、一方で少子高齢化による労働力不足から、定期的に設備補修・更新工事(以下「定修」)を実施する石油化学産業は大きな影響を受けることとなった。
石化協は、会員各社の強い危機感から「定修に係わる課題」を明らかにし、解決に向けて取り組むべき方向性を検討すべく、「第3次石環検」を再開し、検討を進めることとした。
定修問題は、専門的な知識が不可欠であるため、第3次石環検の元に、運営委員会幹事会全社の技術担当部長からなる「定修WG」を設置した。当該WGは11回の検討会を開き検討結果をまとめ、第3次石環検は当該検討結果に基づき、3回の打合せにより「4つの重点課題と方策の提言」に策定し、2018年4月に「答申」として、経済産業省/多田製造産業局長に提出した。

<4つの重点課題>

  • 実施時期調整等による定修の円滑な遂行(3つに方策提言)
  • 柔軟な行政対応による支援(3つの方策提言)
  • 技術面での対応強化(5つの方策提言)
  • 人材育成(3つの方策提言)

2.定期修理研究会

2019年7月、石化協は前年の第3次石環検答申を受けて「定期修理(定修)の課題および解決策」を多方面から検討するため、定修に関る5事業者団体事務局および有識者の協力を得て、「定期修理研究会(研究会)」を立ち上げた。
12月に、7回に亘る研究会の開催(1回は書面審査)を経て、「定期修理研究会報告書(報告書)」を取りまとめ、2020年1月に経済産業省/高田製造産業局長に提出した。
また、研究会の活動と並行して進めていた本件に関る公正取引委員会との折衝により、定修に日程調整について了解を公取から得た。

<報告書の内容>

  • 定期修理の実態
  • 定期修理から発生する問題点と課題解決の方向
  • 解決に向けた方向性および方策
  • 今後取り組むべき課題
  • おわりに(本研究会の期待)