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整理番号:No.48
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1990年 5月  日
改訂    1998年 8月 1日

製品名  1,2-ジクロロエタン


物質の特定

化学名 1,2-ジクロロエタン
(別名:二塩化エタン、二塩化エチレン、エチレンジクロライド 略称;EDC)
含有量 99%以上
化学式及び構造式 ClC2CH2Cl
官報公示整理番号 化審法・安衛法(2)−54
CAS No. 107−06−2
国連分類 クラス 3(引火性液体 P.G 2)
国連番号 1184

危険・有害性の分類

分類の名称 引火性液体、急性毒性物質、その他の有害性物質
危険性 引火性の強い液体(引火点17℃)
有害性 高濃度の蒸気を吸入すると中毒を起こすおそれがある。皮膚 (又は)眼の刺激性がある。動物で発癌性が認められている。
環境影響 生分解性はよくない。濃縮性がない又は低い。

応急措置

眼に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄する。
最低15分間洗眼した後、直ちに医師の手当を受ける。
洗眼の際、瞼を指でよく開いて、眼球、瞼の隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
皮膚に付着した場合 汚染された衣類、靴などは多量の水をかけて洗いながしながら速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服等を切断する。
その後、水または微温湯を流しながらよく洗浄する。
石鹸を用いて皮膚の付着部分を十分に洗い流す。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は医師の手当てを受ける。
吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布等でおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。この場合、医師の指導の下に行うことが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり、被災者に口からものを与えてはならない。直ちに医師の手当てを受ける。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
揮発性物質なので、吐き出させるとかえって危険性が増す。
水でよく口の中を洗わせる。口から何も与えてはならない。
嘔吐が自然に起こるときは、気管への吸入が起きないように身体を傾斜させる。
保温して速やかに医師の手当てを受ける。

火災時の措置

消火方法 火災発生場所の周辺に関係者以外の立入を禁止する。
消火作業は風上から行い、自給式呼吸器等の保護具を着用する。
初期の消火には粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素を用いる。危険なく出来る場合は火元への燃料源を断つ。
大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤等を用いて空気を遮断することが有効である。
棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
周辺火災の場合 周囲の設備等に散水して冷却する。移動可能な容器は速やかに容器を安全な場所に移す。
消火剤 霧状水、粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素

漏出時の措置

  1. 付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
  2. 漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立入を禁止する。
  3. 作業の際には必ず保護具を着用し、飛沫等が皮膚に付着したり、目にはいったり、ガスを吸入しないように注意し、風上から作業する。
  4. 危険なく出来る時は漏洩を止める。
  5. 少量の場合:乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ、密閉できる容器に回収する。
  6. 大量の場合:盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。

取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、眼、粘膜、皮膚との接触は刺激があるので、適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所廃棄装置を設ける。
4.取扱い後は、石鹸を用いて、手洗い,洗顔を行う。又、衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発生させない。
6.取扱い場所では、火気、火花、アークを発するもの、高温点火源を付近で使用しない。
7.取扱場所で使用する電気計装機器等は防爆構造とし、裸電球を使用しない。機器類は静電気対策を講じる。
容器取扱い 8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、又は引きずる等の粗暴な取り扱いをしない。容器から出し入れする時はこぼれないようにする。
10.流動によって静電気が発生する場合があるので出し入れの容器にはアースを取る。
11.使用済み容器は一定の場所を定めて集積する。
保管 12.容器は直射日光を避け、通風の良い、冷暗所に保管する。
13.保管場所は火気厳禁とする。
14.酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。

暴露防止措置

管理濃度 10 ppm(労働省告示第26号 1995.3.27)
許容濃度 日本産業衛生学会勧告値(1997年版)
     時間荷重平均 10ppm(40mg/m3)(皮膚吸収)
ACGIH(1997年版)勧告値
     TLV-TWA 10ppm(40mg/m3) (皮膚吸収)
設備対策 (1) 室内での取扱いは発散源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
(2) 取扱い場所付近に安全シャワー、洗眼、うがい、手洗装置を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
保護具 必要に応じ適宜次の保護具を着用する。
呼吸用保護具 有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器
保護眼鏡 保護眼鏡
保護手袋 耐油性のもの
その他 耐油性保護長靴、耐油性前掛

物理/化学的性質

外観 無色透明液体
沸点 83.5℃
融点 -35.5℃
蒸気圧 13.33 kPa ( 100mmHg) ( 30℃)
比重 1.25( 20℃)
蒸気密度 3.42(空気=1)
臭気 クロロホルム様の甘いにおい
溶解度 0.8gEDC/100gH2O( 20℃),0.2gH2O/100gEDC(20℃)
エチルアルコール、ジエチルエーテル、クロロホルム、四塩化炭素とは自由に混合する。

危険性情報(安定性・反応性)

引火点 17℃(密閉式)
発火点 413℃
爆発限界 上限 15.9vol%  下限 6.2vol%
揮発性が強く、且つ極めて引火し易い。又、移送時の流動、噴霧、漏れ等の際に静電気が発生し易く、わずかな放電火花で引火する危険性がある。

有害性情報

ヒトへの影響

(1) 急性影響20)

人の蒸気吸入による中毒例では、しばしば頭痛、嗜眠、ときに不眠を訴え、吐気、嘔吐をみる。肝臓は腫大し圧痛があり、上腹部痛を伴う。高濃度暴露例では痙攣が報告されている。
20〜60mlの誤飲により死亡することがある。

(2) 発がん性

IARCはEDCをグループ2B[ヒトに対して発癌性があるかも知れない]に、NTPでは[合理的に発癌性があることが知られている]に、ACGIHではA4[発癌物質として分類できない物質]それぞれ分類している。

動物試験結果

(1) 刺激性2)

皮膚刺激性 ウサギ 625mgオープンテスト Mild
500mg/24Hr標準Draiz法 Mild
眼刺激性 ウサギ 63mg 標準Draiz法 Severe

(2) 急性毒性2)

経口 ラット LD50 670mg/kg
マウス LD50 413mg/kg
吸入 ラット LC50 1,000ppm/5H
マウス LCL 5g/m3/2H
皮膚 ウサギ LD50 2,800mg/kg

(3) 慢性毒性

  1. 6ケ月間の吸入実験での最大無作用濃度は、400ppm(ウサギ9、200ppm(ラット)、100ppm(サルとモルモット)であった。この実験での慢性影響は肝臓と腎臓の損傷であった。4)
  2. 17週間吸入させた場合、500ppmではラットでの肺の充血や浮腫、脂肪肝、副腎や心筋の壊死が見られ、ネコやウサギで心臓の損傷が、モルモトで心筋層、肝臓、副腎の脂質変化及び心筋と肝臓の壊死が見られたが、100ppmでは何らの変化も見られなかった。5)
  3. ラットに10日間又は90日間連続してコーン油に混ぜて強制胃内投与(10日間)では、10,30,100,300mg/kg、90日間では 37.5,75,150mg/kgの用量)した結果、10日間試験では最終体重と体重増加を血液学的及び臨床化学的に調べると、対照群の相違はなかった。但し、雄の肝臓が100mg/kgで相対的器官重量が異なった。組織病理学的病変は100mg/kg用量群の前胃の粘膜や粘膜下組織層の炎症を拡散する多くの病巣を示した。90日間試験では処理に関係した影響はなかった。3)

(4) 発がん性

  1. ラット及びマウスへの78週間、濃度5,10,50,250〜150ppmの吸入試験では、腫瘍発生率の増加は認められなかった。11)
  2. ラットへの78週間、平均投与量47、95mg/kg・日の強制経口投与実験では、高用量群の雄に前胃の偏平上皮がん及び雄に乳腺の腺がんと繊維腺腫の発生率の増加が認められた。血管肉腫の発生率の増加は雄に認められた。3) 12)
  3. マウスへの78週間の強制経口投与実験(雄:97、195mg/kg・日、雌:149、299mg/kg・日)では、雌で乳腺腺がん、子宮内膜間質腫瘍及び前胃の偏平上皮がん、雌雄で肺腺腫及び悪性組織球状リンパ腫、雄で肝細胞がんの発生率増加が認められた。3)12)

(5) 変異原性

サルモネラ菌(TA100)の1.3x104μg/plateで極く弱い陽性、(TA1530、TA1535) の10μmol/plateで陽性、(TA1538)の10μmol/plateで陰性であった。9) 10)

(6) 催奇形性・生殖毒性

  1. マウスの2世代にわたって 5、15、50mg/kg・日を飲料水に添加して25週間投与したが、受精率、妊娠率、仔の生存率、体重への影響はなく、また催奇形性も認められなかった。5)
  2. 雌ラットに飼料により11〜17、23〜35mg/kg・日を2年間投与し、未投与の雄ラッと交尾させたが、繁殖性への影響は観察されなかった。5)
  3. 器官形成期の妊娠ラット及びウサギに7時間/日吸収させたところ、100ppmでラット、ウサギ共に、300ppmではウサギに催奇形性、胎仔毒性が認められなかった。また、雌雄ラットの150ppm、6時間/日、60日間の吸入においても2つの胎仔群の繁殖性に何らの悪影響も見られなかった。13)
  4. ラットにおける妊娠6-20日目に0-2.4mmol/kg/日のDCEを強制投与するか、又は0-300ppmのDCEに1日6時間ずつ吸入曝露した結果、DCEおよび/またはその代謝物の胎仔への曝露は確認したが成長異常と催奇形性の証拠はなかった。18)

(7) 代謝排泄

  1. ラットに腹腔内投与したところ、10〜42%が未変化で、12〜15%が炭酸ガスとして呼気から排出され、51〜73%は尿中に、0〜0.6%は糞便中に排出され、0.6〜1.3%は体内に残留した。主な代謝物はクロロ酢酸が6〜28%、S-カルボキシメチルスティンが44〜46%(フリー)、0.5〜5%(抱合体)及びチオ2酢酸が33〜34%であった。6)
  2. S-9やサイトゾル、更には分離したラットの肝臓からの灌流液や胆汁を使った変異原生試験の結果によれば、EDCはS-クロロエチルグルタチオンと想定される代謝活性物質を中間的に形成する。7),8)

環境影響情報

生分解性 難分解性
蓄積性 濃縮性がない又は低い。17)
生態毒性 ハゼの1種       LC50  96Hr 185mg/l (15℃海水)14)
ブルーギル       LC50  96Hr 430mg/l15)
グッピー         LC50  7D 106ppm14)
ファットヘッドミノー   LC50  500ppm14)
ピンパーチ       Tlm   150ppm16)
Gobins minutes    LC50  60min185mg/l . ,27min.225mg/l19)
Fathead minnows,bluegill  LC50  no effect level 5ppm 24Hr19)
Dab(Limanda )         LC50  no effect at 60mg/l 96Hr19)
Guppy(Poecilia retieulata) LC50  7D 106ppm
19)
その他 海洋汚染物質(B類)及び(P)に該当

廃棄上の注意

廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。
(1) ウエス、オガクズ等に吸着させ、焼却炉で少量ずつ焼却する。
(2) 助燃剤と共に焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
排水は吸着分離等適切な処理をしてから排出する
多量の場合は、免許を所有している専門業者に処理を委託する。
空容器を廃棄するときは、内容物を完全に除去した後に処分する。

輸送上の注意

車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人へ運送注意書(イエロー・カード)を渡す。
容器の破損、漏れのないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み、荷崩れ防止を確実に行う。
タンク車(ローリー)等への充填、積み卸ろし時、平地に停車させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧力以下の圧縮ガスまたはポンプを用いて行う。
ホースによる注入作業はホースの結合部を確実に締め付け又は結合したことを確認する。ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

適用法令

労働安全衛生法
  法第57条 名称等を表示すべき有害物
  法28条3項 指針公表物質
  令別表 危険物(引火性の物)
  有機則 第1種有機溶剤
消防法 危険物 第4類第1石油類(指定数量200L)
化審法 指定化学物質
船舶安全法 危規則 別表第5 中引火点引火性液体
航空法 別表第3 引火性液体
海洋汚染防止法 施行令別表B類物質P
水質汚濁防止法 排水基準 0.04mg/l 以下
地下水汚染基準 0.0004mg/l 以下

その他

文献

  1. 1,2-ジクロロエタン適正利用マニュアル 昭和63年2月、EDC適正使用対策等連絡会
  2. Registry of Toxic Effects of Chemical Substances NIOSH,1997
  3. Daniel,F.B.,et al.:EPA,U.S.A. (Drug Chem.Toxicol.,17(4),pp463-477,1994)
  4. H.C.Spencer et al,A.M.A.Arch.Ind.Hyg.Occup.Med. 4,482-493(1951)
  5. Environmental Health Criteria 62,WHO,1987
  6. S.Yllner,Acta.Pharmacol.,30,257-265(1971)
  7. U.Rannug et al,Chem.-biol.Interact.20,1-16(1978)
  8. U.Rannug and B.Beije,Chem.-biol.Interact.24,265-285(1979)
  9. J.McCann et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 72,3190-3193(1975)
  10. H.Brem et al,Cancer Research 34,2576-2579(1974)
  11. C.Maltoni et al,Banbury Report No.5,3-33(1980)
  12. National Cancer Institute"Report on Carcinogenisis Bioassay of 1,2-Dichloroetha- ne"U.S.Government Printing Office 1978 260-899/3208
  13. K.S.Rao et al,Banbury Report No.5,149-161(1980)
  14. K.Verschueren,Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals,2nd Ed.
  15. Journal WPCF,Vol.54,No.6,1982
  16. G.Weiss,Hazardous Chemicals Data Book,2nd Ed.
  17. 通産省公報、昭和53年12月16日
  18. J.P.Payan et al.: Instutut National de Recherche et de Securite,France(Fund Appl Toxicol,28,pp187-198,1995)
  19. Handbook of Environmental Data on Organic Chemical
  20. 後藤稠:産業中毒便覧 医歯薬出版 p590 (1977)