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整理番号:No.40
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1989年 5月23日
改訂    2001年 8月

1.製品の名称  シクロヘキサン


2.組成、成分情報

化学名 シクロヘキサン
別名 ヘキサヒドロベンゼン、ヘキサメチレン
含有量 99%以上
化学式 612 (分子量 84.16)
官報公示整理番号 化審法・安衛法 (3)−2233
CAS No. 110−82−7

3.危険有害性の要約

最重要危険有害性
有害性 軽度の麻酔作用、刺激性がある。
環境影響 難分解性かつ低濃縮性。
物理的及び化学的危険性 爆発しやすく引火点も低い(引火点-18℃)
分類の名称(分類基準は日本方式) 引火性液体(いんかせいえきたい)

4.応急措置

吸入した場合 患者を直ちに空気の新鮮な場所に移し、毛布等で保温して安静にさせ、速やかに医師の手当てを受ける。
呼吸が停止している場合は人工呼吸を行い、呼吸困難な場合は酸素吸入を行う。医師の指導の下に行うことが望ましい。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは直ちに脱ぎ捨てる。その後、水又は微温湯を流しながらよく洗浄する。石鹸を用いて十分に洗い流す。外観に変化が見られたり、痛みが続く場合には医師の手当てを受ける。
目に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄する。最低15分間洗浄した後、医師の手当てを受ける。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。揮発性の液体なので吐き出させるとかえって危険が増す。水でよく口中を洗わせる。口から何も与えてはならない。嘔吐が自然に起こったときは気管への吸入がおきないように身体を傾斜させる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。

5.火災時の措置

消火剤 粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素
特定の消火方法 火災発生場所の周辺に関係者以外の立入を禁止する。大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤などを用いて空気を遮断することが有効である。棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
周辺火災の時は、周辺設備などに散水して冷却する。また、移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。
消火を行う者の保護 自給式呼吸器等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 作業の際は保護具を着用し、飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように注意する。
環境に対する注意事項 下水等に流さない。
除去方法 少量の場合
乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
多量の場合
盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。この際、下水、側溝等に入りこまないように注意する。
二次災害の防止策 危険がなく、可能な場合には漏出を止める。
付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立入を禁止する。

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触は避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内の取り扱いの場合には発散源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
4.取り扱い後手洗い、洗顔を十分に行い、衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発生させない。
6.極めて引火し易いため、火気、火花、アークを発生するもの又は高温点火源を付近で使用しない。
7.取り扱い場所で使用する電気機器は防爆構造のものとし、機器類には静電気対策を行う。

8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、または引きずる等の乱暴な取り扱いをしない。容器から出し入れするときは、こぼれないようにする。
10.静電気対策のために、出し入れする容器にはアースを取り付ける。
保管 11.使用済容器は一定の場所を定めて保管する。
12.容器は直射日光を避け、通風の良い、冷暗所にて保管する。
13.保管場所は火気厳禁とする。
14.酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。
安全な容器包装材料 消防法危険物等級Uの容器が適用される。

8.暴露防止措置

設備対策 室内の取扱いの場合には、発散源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明確に表示しておく。
管理濃度 設定されていない。
許容濃度 日本産業衛生学会(2001年版): 150ppm(520mg/
ACGIH(2001年版)        :TLV-TWA 300ppm  
保護具
呼吸器の保護具 送気マスク、空気呼吸器、有機ガス用防毒マスク
手の保護具 耐油性保護手袋
目の保護具 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具 耐油性保護長靴、前掛

9.物理的及び化学的性質

外観
  物理的状態 液体
   無色透明
臭い ベンジン様の臭気
PH 測定項目に該当しない
物理的状態が変化する特定の温度/温度範囲
  沸点 80.74 ℃
  融点 6.55 ℃
引火点 -18℃(密閉式)
発火点 245℃
爆発特性
  爆発限界 下限: 1.8vol% 上限: 8.4vol%
蒸気圧 16.2 kPa (121.60 mmHg)(30℃)
相対蒸気密度(空気=1) 2.91
比重 0.7758(20℃)
溶解性
   ほとんど不溶
  その他の溶媒 エチルアルコール、エチルエーテル、アセトン、四塩化炭素とは自由に混合する。
オクタノール/水分配係数 log Pow= 3.4

10.安定性及び反応性)

安定性 安定である
反応性 反応性は乏しい
避けるべき条件 着火剤火炎やスパーク)
避けるべき材料 酸化剤
危険有害な分解生成物 加熱分解すると一酸化炭素及び二酸化炭素等が生成する。

11.有害性情報

ヒトへの影響
  局所効果(皮膚、目) 粘膜、目に対しては刺激性がある。1)
動物試験結果
急性毒性
経口 ラット LD50 6,400 〜 31,200 mg/kg 2), 3)
マウス LD50 813〜 1,279 mg/kg 3), 4)
吸入 マウス LC50 60 - 70 g/m (2 hr)5)
ウサギ LC50 90 g/m (1 hr) 6)
経皮 ウサギ LD100 180.2 g/kg 7)
  感作性 皮膚感作性に関する文献は調査した範囲では認められない。
  慢性・
  長期毒性
霊長類に本化合物を1243ppmの濃度で6時間/日、50週にわたり吸入曝露した試験では異常は認められなかった。8)
ウサギに25 g/m3以上の濃度を6〜8時間/日、5日/週で2〜26週間暴露すると、軽い麻酔、下肢の麻痺、振せん、体重減少が現れ、死亡例も認められた。7)
ラットに、0.5 g/m3の濃度で、4.5時間/日で5ヵ月間曝露した実験では、中枢神経の変化(刺激閾値の低下ないし上昇、反射時間の延長)が吸入中に認められたが、吸入を中止すると速やかに消失した。白血球数は対照群に比べて若干減少した。
9)
  変異原性 サルモネラ菌(TA1535、TA1537、TA98、TA100株)を用いた復帰変異原性試験では10〜104μg/plateの用量で陰性であった。10)
CHL細胞を用いた染色体異常試験では4 mg/mlの濃度まで陰性であった。
11)
  代謝・排泄 シクロヘキサンをイヌに投与した場合、約30%がグルクロン酸に抱合されて排泄され、その主な代謝物はシクロヘキサノールであった。しかし、少量のトランス-シクロヘキサン-1,2-ジオールグルクロナイドも認められた。
300 - 400 mg/kg投与では、35〜45%が呼気から排出され、25〜35%は無変化のままであり、10%は、二酸化炭素として排出された。約50%は代謝産物として2日以内に尿から排出された。0.3 mg/kg投与では呼気からの排出は5%にすぎず、90%は尿から排出された。
12)

12.環境影響情報

残留性/分解性 難分解性 (BOD0.6% 2週間) 13) 
生体蓄積性 Level 1 (0.1mg/L)
Level 2 (0.01mg/L)
31〜102 13)
37〜129
13)
生態毒性 14)
  魚毒性 ファットヘッドミノー LC50 = 35 mg/l (48hr)
ブルーギル  LC50 = 40 mg/l (48hr)
グッピー  LC50 = 57 mg/l (48hr)
金魚 LC50 = 42 mg/l (48hr)
  その他 ミジンコ(Daphnia magna) LC50 = 3.78 mg/l 

13.廃棄上の注意

  1. 廃棄は次のいずれかの方法によって焼却により行う。
    1)他の燃料と混ぜて適切な焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
    2)おがくず、ウェス等に吸着させて焼却してもよい。
  2. 多量の場合は、免許を所有している専門業者に処理を委託する。
  3. 空容器を廃棄する場合は、内容物を水洗い又は蒸気吹き込みで洗浄した後に処分する。

14.輸送上の注意

国際規制 IMDG(国際海上危険物規則)コード:ハザードクラス3(Flammable liquid) Packing groupU
ICAO-TI(国際民間航空機関技術指針)/IATA-DGR(国際航空運送協会危険物規則:ハザードクラス3(Flammable liquid) Packing group U 
国連分類 3(Flammable liquid)
国連番号 1145
国内規制 下記の法令に従い、規定の積載方法、容器等によって輸送する。
消防法:危険物第4類第1石油類。
輸送の特定の安全対策及び条件 1.車両等によって運搬する場合、荷送人は運送人に運送注意書(イエローカード)を交付する。
2.容器の破損、漏れのないことを確かめ、転倒、落下、損傷のないように積み込み、荷崩れ防止を確実に行う。
3.タンク車(ローリー)等への積み込み、積み下ろしの際は平地に停止させ、車止めをし接地する。タンク車の許容圧力以下の圧縮ガスまたはポンプを用いる。
ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
4.ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働安全衛生法 法第57条の2第1項(通知対象物)
   令別表第1危険物(引火性のもの)
消防法 危険物第4類第1石油類非水溶性液体(指定数量 200リットル)
船舶安全法 危規則 別表第5 低引火点引火性液体
航空法 危険物告示別表第3 引火性液体
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 : 施行令別表第一C類物質

16.その他の情報

文献

  1. Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals, p211
  2. E. T. Kimura, et al : Toxicol. Appl. Pharmacol., 19, 699 - 704, (1971)
  3. NIOSH : Registry of Toxic Effects of Chemical Substances, (1997)
  4. 後藤 稠ら 編:産業中毒便覧 , 医歯薬出版 (1982)
  5. N. W. Lagarew, Naunyn-schmeidebergs: Arch. Exp. Pathol. Pharmacol., 143, 223 (1929)
  6. J. F. Treon et al: J. Ind. Hyg., 25, 323 (1943)
  7. J. F. Treon, W. E. Crutchfield, Jr., and K. V. Kitzmiller: J. Ind. Hygene Toxicolo., 25(6), 199 (1943)
  8. Patty's Industrial Hygiene and Toxicology, 4th ed. (1994)
  9. Kuryl and Skill: Gig. Tr., 5(1), 13, (1961)
  10. K. Mortelmans et al: Environ. Mutagen., 8 Suppl. 7, 1 - 119, (1986)
  11. 石館 基 監修:"染色体異常試験データ集" (1987)
  12. T. H. Elliot et al: Biochem., 72, 193, (1959)
  13. 化学品検査協会:"化審法の既存化学物質安全性点検データ集" (1992)
  14. EPA : "AQUIRE" CIS online (1997)