HOME > 製品安全データシート > アクリル酸ブチル
 
整理番号:No.31
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1986年 5月25日
改訂    1998年 8月 1日

製品名  アクリル酸ブチル


物質の特定

化学名 アクリル酸ブチル
(別名 :ブチルアクリレート、2−プロペン酸ブチル)
含有量 99%以上
化学式 CH2=CHCOO49
官報公示整理番号 化審法・安衛法(2)−989
CAS No. 141−32−2
国連分類 安定剤入りのもの クラス 3(引火性液体)
国連番号 安定剤入りのもの 2348

危険・有害性の分類

危険の名称 引火性液体
危険性 引火性の液体(引火点 40.1℃)
熱、光、過酸化物の影響下で容易に重合する。
強酸化剤と激しく反応し、火災爆発の危険性をもたらす。
有害性 皮膚刺激性が強く、又催涙性がある。
皮膚感作性がある。
環境影響 生分解性良好。 水生生物に毒性が強い。

応急措置

眼に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り取り除いて洗浄する。
最低15分洗浄した後、直ちに眼科医の手当てを受ける。
洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば、衣服を切断する。
水又は微温湯を流しながら洗浄する。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合には直ちに医師の手当を受ける。
吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などで覆い、保温して安静に保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難の場合は酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うのが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり、被災者に物を与えてはならない。直ちに医師の手当てを受ける。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
揮発性の液体なので吐き出させるとかえって危険性を増す。
水でよく口の中を洗わせる。嘔吐が自然に起こったときは、気管への吸入が起きないように体を傾斜させる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。

火災時の措置

消火方法 火災発生場所周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
消火作業の際には粉末、炭酸ガスを用いる。
大規模火災の際には、泡消火剤を用いて空気を遮断することが有効である。
周辺火災の場合 周囲の設備などに散水して冷却する。
移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。
消火剤 粉末、炭酸ガス、泡(耐アルコール泡)
水を使うと液を溢れさせ、火災を広げるの使ってはならない。

漏出時の措置

  1. 付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
  2. 漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
  3. 作業の際は保護具を着用し、飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように注意する。
  4. 危険なくできるときは漏洩を止める。
  5. 少量の場合
    乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
  6. 大量の場合
    盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
    この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。

取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、眼、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.取扱い後は、手洗い、洗顔を十分に行い、又衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎみだりに蒸気を発散させない。
6.引火しやすいため、火気、火花、アークを発するもの、又は高温点火源付近で使用しない。
7.取扱い場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類は静電気対策を講じる。
容器取扱い 8.容器は破損、腐食、割れ等の無い物を使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、又は引きずる等乱暴な取扱いをしない。
10.容器から出し入れするときは、こぼれないようにする。
11.鉄錆、過酸化物、水などは重合を促進するので、容器の材質はステンレス鋼、或いはポリエチレン、フェノール樹脂等の内面ライニング材を用いる。
保管 12.使用済み容器は一定の場所を定めて保管する。
13.容器は直射日光を避け、通風の良い冷暗所に保管する。
14.保管場所は火気厳禁とする
15.高温では重合の危険性があるので、長期保存の場合は、30℃以下に保持する。重合防止のための重合防止剤濃度、保存温度、所定の酸素濃度を確保する。
16.酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。

暴露防止措置

管理濃度 未設定
許容濃度 日本産業衛生学会勧告値(1997年版);未設定
ACGIH(1997年版)勧告値 : TWA 10 ppm
設備対策 蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
保護具 防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器、保護手袋(ゴム)、
保護長靴(ゴム)、保護眼鏡

物理/化学的性質

外観 無色透明液体
沸点 148℃
融点 −64.6℃
蒸気圧 0.44kPa(20℃)
比重 0.92
蒸気密度 4.42(空気=1)
溶解度 水 : 2.0g/100ml
臭気 芳香を有する

危険性情報(安定性・反応性)

引火点 40.1℃(密閉式)(アクリル酸エステル工業会 消防庁危険物等 登録データ)
発火点 284℃
爆発限界 上限 9.9%  下限 1.3%
安定性・反応性 (1)容易に重合する。重合が急速に進むと温度が急上昇し、加速的に蒸気反応性 圧が上昇して爆発する危険性がある。この為、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が15−300ppm添加されている。
(2) 重合防止剤として添加されている(MEHQ)は酸素が存在しないとその効力がない。従って、常に酸素の存在下で保管、貯蔵を必要とする。
(3) 重合防止剤が入っていても、熱、光、水分、過酸化物、鉄錆等によって重合が始まることがある。
(4) 気相部を不活性ガスでシールする場合は爆発防止、重合防止両面を考慮して酸素5−8%を含む不活性ガスを使用する。

有害性情報

ヒトへの影響

蒸気は呼吸器系に刺激作用があり、ACGIHの Tlv10 ppmはこの作用を防ぐために定められている。又皮膚からも吸収され中毒作用を起こす。
アクリル酸ブチルは労働省で感作性物質として分類された。

動物試験結果

(1) 急性毒性1)

経口 ラット LD50 2,680mg/Kg
経口 マウス LD50 7,561mg/Kg
経皮 ウサギ LD50 2,000mg/kg
吸入 ラット LC50 10,300mg/m

(2) 刺激性

ウサギの皮膚及び眼に対する刺激性試験は中程度の結果が得られている。

(3) 感作性

Polak,Split adjuvant, Maximization,Epicutaneous Bの各方法で、モルモットに対して感作性を示す。2)

(4) 変異原性

  1. サルモネラ菌を用いるAmes Test結果は陰性である。
  2. IARCのインビボ及びインビトロの変異原性試験に関するレビューではアクリル酸ブチルは非変異原性物質としている。

(5) 発がん性

  1. C3H/HeJマウスに対する皮膚への繰返し塗布の試験では腫瘍の発生は見られなかった。3)
  2. ラットへ0,15,45,135 ppmを2年間吸入暴露した結果、全身性の中毒は見られなかった。r鼻粘膜へ局所的影響が見られた。濃度が高いほど影響は大きかった。角膜混濁が135 ppmの暴露群で見られた。暴露に関連する腫瘍の発生はなかった。3)
  3. IARCのレビューではグループ3(ヒトへの発がん性は評価できない物質)に、
    又ACGIHではA4(ヒトへの発がん性の有無を評価できない物質)に分類され ている。4)

(6) 生殖毒性・発育毒性

ラットに対して母獣毒性が見られる濃度で暴露した結果は、胚毒性は見られたが胎児毒性、催奇形性は見られなかった。3)

(7) 代謝・排泄・分布

肝臓、腎臓、肺で加水分解されアクリル酸とブタノールとなる。アクリル酸は又速やかに代謝されCO2となり呼気から排泄される。


環境影響情報

生分解性 生分解性良好
化審法の既存化学物質点検で生分解性良好物質とされている。
濃縮性 文献なし。
魚毒性 金魚       48hr.   LC50   5ppm1)
Golden orfe        LC50  23ppm1)
藻類毒性 緑藻類     96hr.   EC50  11ppm1)
ミジンコ毒性 文献なし。

廃棄上の注意
廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。

  1. おがくず、ウエス等に吸着させ、焼却炉で焼却する。
  2. 焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
  3. 空容器を廃棄する場合は内容物を完全に除去した後処分する。
  4. 廃棄を外部に委託する場合は、免許を持った産業廃棄物処理業者に内容物を明確にして処理を委託する。

輸送上の注意

  1. 車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人へ運送注意書、イエローカードを携帯させる。
  2. 容器の破損漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み荷崩れ防止を確実に行う。
  3. タンク車(ローリー)等への充填、積み下ろしの時は平地に停止させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧以下の圧縮ガス又はポンプを用いて行う。
  4. ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
  5. ローリー、運搬船には所定の標識、消火設備、災害防止用応急資材備える。

適用法令

労働安全衛生法
  令別表第1 危険物(引火性のもの)
消防法 危険物第4類第二石油類(非水溶性)指定数量(1000リットル)
船舶安全法 危規則 別表第5 引火性液体
航空法 告示別表第 引火性液体
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律: 施行令別表B類物質

その他

文献

  1. アクリル酸エステル工業会:アクリル酸及びアクリル酸エステル類取扱い安全指針(平成9年)
  2. D.Parker,J.Turk : Contact Dermatitis,9 55-60(1983)
  3. ACGIH : Documentation of The Threshold Limit Values(1992)
  4. IARC:IARC Monograph Vol 39(1986)