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整理番号:No.30
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1986年 5月25日
改訂    2001年 8月  日

1.製品の名称  アクリル酸エチル


2.組成、成分情報

化学名 アクリル酸エチル
別名 エチルアクリレート、2−プロペン酸エチル
含有量 99%以上
化学式 CH2=CHCOO25 (分子量:100.12)
官報公示整理番号 化審法・安衛法(2)−988
CAS No. 140−88−5

3.危険・有害性の要約

最重要危険有害性         強い引火性がある。
  有害性 皮膚刺激性が強く、又催涙性がある。
皮膚感作性がある。
  環境影響 生分解性良好な物質。 水生生物に対して強い毒性がある。
  物理的及び化学的危険性 強い引火性のある液体(引火点; 7.8℃)
熱、光、過酸化物の影響下で容易に重合する。
強酸化剤と激しく反応し、火災爆発の危険性をもたらす。
  主な症状 皮膚、眼、粘膜、食道に強い刺激がある。長期吸入暴露では、眠気、頭痛、吐き気を生じる。
分類の名称(分類基準は日本方式) 引火性液体

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などで覆い、保温して安静に保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難の場合は酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うのが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり、被災者に口から物を与えてはならない。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば、衣服を切断する。
水又は微温湯を流しながら洗浄する。
石鹸を用いてよく洗い落とす。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合には直ちに医師の手当を受ける。
眼に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り取り除いて洗浄する。
最低15分洗浄した後、直ちに眼科医の手当てを受ける。
洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
揮発性の液体なので吐き出させるとかえって危険性を増す。
水でよく口の中を洗わせる。嘔吐が自然に起こったときは、気管への吸入が起きないように体を傾斜させる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。
応急措置をする者の保護 染された衣類や保護具を取り除く。救助者はゴム手袋と密閉ゴーグルなどの保護具を着用する。

5.火災時の措置

消火剤 粉末、二酸化炭素、泡(耐アルコール泡)
特定の消火方法 火災発生場所周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
消火作業は、可能な限り風上から行う。
初期消火は、粉末、二酸化炭素を用いるが、大規模火災の際には、泡消火剤を用いて空気を遮断することが有効である。
周辺火災の場合は、周囲の設備などに散水して冷却する。
移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。
消火を行う者の保護 消火作業では、適切な保護具(手袋、眼鏡、防毒マスク等)を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 屋内の場合、処理が終わるまで十分に換気を行う。
漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者の立入を禁止する。
風上から作業をし、作業の際には、暴露防止及び保護措置欄に記載の保護具を着用し、飛沫等が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように注意する。         
環境に対する注意事項 流出した製品が河川等に排出され、環境への影響を起こさないように注意する。
除去方法 危険なく出来るときは、漏洩を止める。
少量の場合;乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
大量の場合;盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
下水、側溝等に入り込まないように注意する。
二次災害の防止策 付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火機材を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 吸入を防ぎ、眼、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業する。
作業環境を許容濃度以下に保つ。
室内で取り扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
取扱い後は、手洗い、洗顔を十分に行い、又衣服に付着した場合は着替える。
漏れ、あふれ、飛散を防ぎみだりに蒸気を発散させない。
引火しやすいため、火気、火花、アークを発するもの、又は高温点火源付近で使用しない。
取扱場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類は静電気対策を講じる。
容器は破損、腐食、割れ等の無い物を使用する。
容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、又は引きずる等乱暴な取扱いはしない。
容器から出し入れする時は、こぼれないようにする。
保管
  適切な保管条件


容器は直射日光を避け、通風の良い冷暗所に保管する。
保管場所は火気厳禁とする。
使用済み容器は一定の場所を定めて保管する。
高温では、重合の危険性があるので長期保存の場合は、30℃以下に保持する。重合防止のため重合防止剤濃度、保存温度所定の酸素濃度を確保する。
酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。
  安全な容器包装材料 容器の材質はステンレス鋼、或いはポリエチレン、フェノール樹脂等の内面ライニング材を用いる。

8.暴露防止及び保護措置

設備対策 蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
管理濃度 設定されていない。
許容濃度
日本産業衛生学会(2001年版) : 設定されていない。
ACGIH(2001年版) : TLV-TWA; 5 ppm
TLV-STEL; 15ppm
保護具
  呼吸器の保護具 機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器
  手の保護具 ゴム手袋
  目の保護具 保護眼鏡又は保護面
  皮膚及び身体の保護具 保護長靴(ゴム)

9.物理的及び化学的性質

外観
  物理的状態


液体
  色 無色透明
臭い 芳香を有する
物理的状態が変化する
特定の温度/温度範囲
  沸点 99℃
  融点 -71℃
  引火点 7.8 ℃(密閉式)(アクリル酸エステル工業会消防庁危険物等データベース登録値)
  発火点 384 ℃
爆発特性    爆発限界 下限:1.4 vol%    上限:14vol%
蒸気圧 3.9kPa(20℃)
相対蒸気密度(空気=1) 3.45
比重 0.92
溶解性 水: 1.5 g/100mL(25 ℃)
オクタノール/水分配係数:log Pow=1.18 (25 ℃)

10.安定性及び反応性

安定性 容易に重合する。重合が急速に進むと温度が上昇し、加速的に蒸気反応性圧が上昇して爆発する危険性がある。このため、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が15-300ppm添加されている。
重合防止剤として添加されている(MEHQ)は酸素が存在しないとその効力がない。従って常に酸素の存在下で保管、貯蔵を必要とする。
気相部を不活性ガスでシールする場合は爆発防止、重合防止両面を考慮して酸素5−8%を含む不活性ガスを使用する。
反応性 熱、光、水分、過酸化物、鉄錆等によって容易に重合反応が起こる。
避けるべき条件 重合防止剤が入っていても、熱、光、水分、過酸化物、鉄錆等によって重合が始まることがあるので注意を要する。

11.有害性情報

急性毒性
経口 ラット LD50 800mg/Kg 1)
経口 マウス LD50 1,800mg/Kg 1)
経皮 ウサギ LD50 1,800mg/Kg 1)
吸入 ラット LC50 1,414ppm/4hr. 1)
局所効果
(皮膚、目)
ヒト;皮膚、眼、粘膜、食道に強い刺激がある。 2)
動物;ラット、ウサギ、サル、モルモットの皮膚及び眼に対する刺激性試験は中程度の刺激性結果が得られている。 3)
感作性 取扱い作業者の一部に皮膚のアレルギー反応(皮膚炎、湿疹、蕁麻疹)が見られる。 2)
修正Landsteiner Test及びFreund/s Complete Adjuvant Testの各方法で、モルモットに対して感作性を示す。 4)
慢性・長期毒性 ヒト;50−70ppmの長期吸入暴露では、眠気、頭痛、吐き気を生じた。 1)
動物;70、300、540ppmをラットに30日間吸入暴露し、病理解剖で高濃度及び中濃度の暴露群で肺、肝臓、腎臓の影響が見られた。サルに対して24.5、26.2、272、1024ppm/7hr/dayの暴露がなされた。
1024ppmの暴露では2.2日で死亡した。272ppmの暴露は無気力になったが、28日後の結果は体重減少とわずかな粘膜の刺激であった。24.5及び26.2ppmの130日の暴露は毒性症状はなかった。 2)
発がん性 ラット及びマウスに100及び200mg/Kgを2年間強制胃内投与したNational Toxicology Programの発ガン性試験では前胃の扁平上皮ガン又は乳頭腫を誘発した。 2)
ラット及びマウスに0.5、25、75ppmを6hr/day、5day/week、27month暴露した発ガン性試験の結果は陰性であった。 2)
IARC(国際ガン研究機関)ではグループ2B(ヒトに対して発がん性を示す可能性がある)、NTP(米国・国家毒性プログラム)では(ヒトに対して発がん性であることが合理的に予測される物質)に、ACGIHではA2(ヒトへの発がん性が疑われる物質)に又、日本産業衛生学会では2B(人間に対しておそらく発がん性があると考えられる物質)に分類されている。
変異原性 サルモネラ菌を用いるAmes Test結果は陰性である。
チャイニーズハムスターの培養細胞を用いた染色体異常試験では陽性の結果を示す。
マウスを用いた小核試験では陰性であった。 3)
催奇形性
生殖毒性
妊娠ラットに対する0、50、150ppm6hr/day、6日/15日懐胎器官部の暴露では母獣に対しての毒性(体重増加の抑制、摂餌量の減少等)は見られたが催奇形性・生殖毒性はなかった。 2)
代謝、排泄 排泄:肝臓、腎臓、肺で加水分解されアクリル酸とエタノールになる。アクリル酸は又速やかに代謝されCO2となり呼気から排泄される。 2)

12.環境影響情報

残留性/分解性 化審法の既存化学物質点検で生分解性良好物質とされている。
分解率(BOD/TOD) 6)
非馴化汚泥使用 5日間 28% 20日間 35%
馴化汚泥使用 5日間 66% 20日間 79%
生体蓄積性 文献なし。
生態毒性 魚毒性:金魚 LC50(72hr) 5ppm 3)

13.廃棄場の注意

廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。
・ おがくず、ウエス等に吸着させ、焼却炉で焼却する。
・ 焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
空容器を廃棄する場合は内容物を完全に除去した後処分する。
廃棄を外部に委託する場合は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に内容物を明確にして処理を委託する。
低濃度廃水は活性汚泥法で処理できる。


14.輸送上の注意

国際規制
  IMDG(国際海上危険物規則)コード P.3320 クラス3.2(P)等級U
  ICAO-TI(国際民間航空機関技術指針)/ クラス3等級U PAT305 Y305 CAO307
  IATA-DGR(国際航空運送協会危険物規則)
国連分類 安定剤入りのもの クラス3 国連番号:安定剤入りのもの 1917
国内規制 消防法;危険物第4類第1石油類(非水溶性)指定数量(200リットル)  
輸送の特定の安全対策及び条件 車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人へ運送注意書、イエローカードを携帯させる。
容器の破損漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み荷崩れ防止を確実に行う。
タンク車(ローリー)等への充填、積み下ろしの時は平地に停止させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧以下の圧縮ガス又はポンプを用いて行う。
ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
ローリー、運搬船には所定の標識、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働安全衛生法 施行令別表1-4、危険物(引火性のもの)
法第57条の2、通知対象物 政令番号第3号
消防法 危険物第4類第1石油類(非水溶性)指定数量(200リットル)
化学物質管理法 第一種指定化学物質 政令番号第4号
船舶安全法 規則第2、3条危険物告示別表第5引火性液体類 安定剤入りのもの
航空法 施行規則194条危険物告示別表第3引火性液体 安定剤入りのもの
港則法 施行規則第12条危険物告示引火性液体類
海洋汚染防止法 施行令別表第1有害液体物質(A類)
施行規則第30条の2の3、運輸省告示・個品運送P 安定剤入り

16.その他の情報

1. NIOSH:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances(Feb.2001)
2. ACGIH:Documentation of The Threshold Limit Values(1991)
3. IUCLID:Data Set(May 2001)
4. T.Waegemekers et al.:Contact Dermatitis,),9,372-376(1983)
5. アクリル酸エステル工業会:アクリル酸エステル及びアクリル酸類取扱い指針
6. アクリル酸エステル工業会:アクリル酸エステル及びアクリル酸類取扱い安全指針(平成9年)