整理番号:No.28 |
石 油 化 学 工 業 協 会
作成 1986年 5月25日
改訂 2001年 8月 |
1.製品の名称 酢酸 n-ブチル
2.組成、成分情報
| 化学名 |
: |
酢酸 n-ブチル |
| 別名 |
: |
酢酸ブチル、n-ブチルアセテート、酢ブチ |
| 含有量 |
: |
99%以上 |
| 化学式 |
: |
CH3COO(CH2)3CH3 (分子量116.16) |
| 官報公示整理番号 |
: |
化審法・安衛法(2)−731 |
| CAS No. |
: |
123−86−4 |
3.危険有害性の要約
| 最重要危険有害性 |
|
|
| 有害性 |
: |
吸入すると強い毒性がある。高濃度の蒸気を吸入すると中毒を起こす恐れがある。 |
| 環境影響 |
: |
水生生物への毒性は弱い乃至中程度であるが、生分解性と水オクタノール分配係数から考えて通常、影響は少ない。 |
| 物理的及び化学的危険性 |
: |
引火性の液体で可燃性があり、爆発混合ガスを形成することがある。静電気を帯電しやすく着火の危険性がある。 |
| 主要な症候 |
: |
短期暴露によって目、鼻、咽喉に刺激症状が現れる。極めて高濃度の暴露では意識消失にいたる。 |
| 分類の名称(分類基準は日本方式) |
: |
引火性液体、急性毒性物質 |
4.応急措置
| 吸入した場合 |
: |
被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。身体を毛布などでおおい、保温して安静を保つ。呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合には酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うことが望ましい。 |
| 皮膚に付着した場合 |
: |
汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服等を切断する。その後、水又は微温湯を流しながらよく洗浄する。外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は医師の手当てを受ける。 |
| 目に入った場合 |
: |
コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄を続ける。清浄な水で最低15分間洗浄した後、直ちに、眼科医の手当てを受ける。 |
| 飲み込んだ場合 |
: |
水でよく口を洗わせる。吐かせようとしてはいけない。嘔吐が自然に起こったときは気道への吸入が起きないよう身体を傾斜させる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。 |
5.火災時の措置
| 消火剤 |
: |
噴霧水、粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素 |
| 特定の消火方法 |
: |
火災発生場所の周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
初期の消火には粉末、二酸化炭素などを用いる。大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤などを用いて空気を遮断することが有効である。
周辺火災の場合は周囲の設備などに散水して冷却する。移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。 |
| 消火を行う者の保護 |
: |
自給式呼吸器等の保護具を着用する。 |
6.漏出時の措置
| 人体に対する注意事項 |
: |
暴露防止のため保護具を着用し、飛沫の皮膚への付着やガスの吸入をしないようにする。 |
| 環境に対する注意事項 |
: |
下水や側溝等に入り込まないように注意する。 |
| 除去方法 |
: |
漏出した場所の周辺に、ロープ等を張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
危険なくできる時は漏洩を止める。
少量漏出の場合−乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
大量漏出の場合− 盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。この際、下水や側溝等に入り込まないように注意する。 |
| 二次災害の防止策 |
: |
付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。 |
7.取扱い及び保管上の注意
| 取扱い |
: |
1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、または局所排気装置を設ける。
4.取扱い後、手洗い洗顔等を十分に行い、衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発散させない。
6.引火しやすいため、火気、火花、アークを発生するものまたは高温点火源を付近で使用しない。
7.取扱い場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類には静電気対策を講じる。
8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、または引きずる等の乱暴な取扱いをしない。容器から出し入れするときは、
零れないようにする。
10. 流動によって静電気が発生する場合があるので出し入れの容器にはアースをとる。
11. 使用済み容器は一定の場所を定めて保管する。
12. 充填、取り出し、取扱時に圧縮空気を使用してはならない。 |
| 保管 |
|
|
| 適切な保管条件 |
: |
1.容器は直射日光を避け、風通しのよい、冷暗所に保管する。
2.保管場所は火気厳禁とする。
3.酸化性物質、有機過酸化物、塩基、酸等と同一の場所で保管しない。 |
8.暴露防止及び保護措置
| 設備対策 |
: |
室内での取扱いの場合は発生源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗顔設備を設け、その位置を明瞭に表示しておく。 |
| 管理濃度 |
: |
150ppm(労働省告示第26号 1995.3.27) |
| 許容濃度 |
: |
| 日本産業衛生学会(2001年版) |
: |
100ppm(475r/m3) |
| ACGIH(2001年版) |
: |
TLV-TWA 150ppm
TLV-STEL 200ppm |
|
| 保護具 |
: |
| 呼吸器の保護具 |
: |
状況に応じ有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器等を着用する。 |
| 手の保護具 |
: |
状況に応じ保護手袋等を着用する。 |
| 目の保護具 |
: |
状況に応じ保護眼鏡等を着用する。 |
| 皮膚及び身体の保護具 |
: |
状況に応じ保護長靴等を着用する。 |
|
9.物理的及び化学的性質
| 外観 |
|
|
| 物理的状態 |
|
液体 |
| 色 |
: |
無色透明 |
| 臭い |
: |
果実様 |
| PH |
: |
測定項目に該当しない |
物理的状態が変化する
特定の温度/温度変化 |
|
|
| 沸点範囲 |
: |
124〜127℃ 6) |
| 融点 |
: |
-74℃ |
| 引火点 |
: |
22℃(密閉) 7)
28.2 ℃(密閉式:消防庁危険物等登録データ)
*製品性状により引火点に幅があり、海上輸送或いは航空輸送に関する法規制で23℃未満か以上かでクラス、包装等級等の規制が区別されている物質であるので、取扱等においては引火点の測定、MSDS入手等による確認が必要である。(第14項 輸送上の注意 参照) |
| 発火点 |
: |
427℃ |
| 爆発特性 |
|
|
| 爆発限界 |
: |
下限:1.7 vol% 上限:7.6
vol% (空気中) 7) |
| 蒸気圧 |
: |
1.3 kPa(20℃) 6) |
| 相対蒸気密度(空気=1) |
: |
4.0 |
| 比重 |
: |
0.88 (20/4℃) 6) |
| 溶解性 |
|
|
| 水 |
: |
水に溶けにくい(0.83g/100ml
、25℃) 7) |
| その他の溶媒 |
: |
アルコール、エーテル、炭化水素に溶ける。 |
| オクタノール/水分配係数 |
: |
log POW=1.82 7)、1.79
8) |
10.安定性及び反応性
| 安定性 |
: |
通常の状態では安定。水分と接触し徐々に酢酸とブタノールを生じる。 |
| 反応性 |
: |
強塩基、強酸、硝酸塩、強酸化剤と反応し、発火爆発に至ることがある。プラスチックやゴムを侵すことがある。 |
11.有害性情報
| 急性毒性 |
|
|
| (ヒト) |
: |
1.短期暴露によって目、鼻、咽喉に刺激症状が現れる。極めて高濃度の暴露では意識消失にいたる。 1)
2.2〜5分間の吸入暴露で200ppmでは咽喉の刺激症状、300ppmでは目と鼻の刺激症状とともに、激しい咽喉の刺激症状を訴えた。 1) |
| (動物) |
: |
| 経口 |
ラット |
LD50 |
14,130 mg/kg 4) |
|
マウス |
LD50 |
7,100 mg/kg 4) |
|
ウサギ |
LD50 |
7,400 mg/kg 4) |
| 吸入 |
ラット |
LC50 |
160ppm/4H、391ppm/4H 4)
*これらはミストの吸入試験の結果であり蒸気では6,335ppmで死亡は無かったと報告されている。 4) |
| 経皮 |
ウサギ |
LD50 |
>5ml/kg 4) |
|
局所効果
(皮膚、目) |
: |
| 皮膚刺激 |
ウサギ |
弱い〜中程度 (24時間 500 mg) 2) |
| 目刺激 |
ウサギ |
中等度 (100 mg) 2) |
|
ウサギ |
中等度 (100 mg, Draize 法で平均スコア7.50) 3) |
|
| 感作性 |
|
|
| (ヒト) |
: |
50名の被験者に0.5mlの酢酸ブチルを含むパッチを24hr/回×9回/3週間ほど貼付し、10〜14後に再度パッチングを行った。感作性は見られなかった。
1) |
| (動物) |
: |
マウスのear-swelling testおよびモルモットのmaximization testで感作性はない。
4) |
| 発がん性 |
: |
1. IARC、NTP、日本産業衛生学会で評価対象物質として取り上げられていない。
2. ACGIH A4に分類(発がん性物質として分類できない物質) |
| 変異原性 |
: |
エームス試験で陰性。哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で陰性。 4) |
| 催奇形性 |
: |
ラット TCL0 1500ppm/7h/day 受胎後7-16日間 4) |
| その他 |
|
|
| 亜急性毒性 |
: |
・ウサギ 酢酸ブチル500ppmで20日、1000ppmで4日の試験で角膜や結膜に損傷は見られなかった。
4)
・モルモット 同じく500ppmで10日、1000ppmで4日の試験で角膜や結膜に損傷は見られなかった。 4)
・ネコを1,600ppm〜4,200ppm、6時間/日で6日間暴露したところ4,200ppmで気道の刺激、衰弱、体重減少が、また3,100ppmでは血球の形態変化が、1,600ppmでは流涎や眼のわずかな刺激症状が見られた。 4) |
| 神経毒性 |
: |
0〜6,000ppmで6時間の暴露でその後2週間、体重の減少は見られたが死亡も特別の病変も無かった。運動機能の低下、流涎が3,000、6,000ppmで観察され、1,500ppmでは僅かな運動機能低下が見られた。運動活性に関するNOEL(無作用量)は1,500ppmである。 4) |
| 代謝・排泄 |
: |
哺乳動物の尿中に排出される酢酸ブチルの代謝物は4-ヒドロキシー3-メトキシマンデル酸である。0.2r/lの酢酸ブチルを吸入すると50%が呼吸中に検出される。 1) |
12.環境影響情報
| 残留性/分解性 |
: |
1.120時間の生分解性試験で直接定量で87%、間接定量で38%の分解率を示したとの報告がある。 5)
2.BOD5 46% ,BOD20 60% 6) |
| 生体蓄積性 |
: |
オクタノール/水分配係数値log
POW=1.82 7)より、生物濃縮性は低いと考えられる。 |
| 生態毒性 |
|
|
| 魚毒性 |
: |
ブルーギル LC50 96hr
100ppm 6) |
| その他 |
: |
ミジンコ LC50 96hr
44ppm 6)
藻類(scenedesmus)LC50 48hr 320ppm 6)
log POW=1.82 7) |
13.廃棄上の注意
- 廃棄は焼却により行う。その方法は次のどれかによる。
焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
少量の場合はケイソウ土等に吸収させて焼却炉で焼却する。
- これを含む廃水は活性汚泥等の処理により清浄にしてから排出する。
- 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除いた後処分する。
- これらの処理は、法規の規定に従って行う。
14.輸送上の注意
| 国際規制 |
|
|
| IMDG(国際海上危険物規則)コード |
: |
クラス3.2(引火点が-18℃以上23℃未満のもの)
クラス3.3(引火点が23℃以上60.5℃以下のもの) |
ICAO-TI(国際民間航空機関技術指針)
/IATA-DGR(国際航空運送協会危険物規則) |
: |
クラス3(引火性液体) |
| 国連分類 |
: |
クラス3(引火性液体、P.G.U又はV) 国連番号:1123 |
| 国内規制 |
|
|
| 消防法 |
: |
危険物第4類第2石油類(非水溶性液体)指定数量1000L |
| 船舶安全法 |
: |
危規則告示別表第5(引火性液体類、P.G.U又はV) |
| 航空法 |
: |
告示別表第3(引火性液体、P.G.U又はV) |
| 輸送の特定の安全対策及び条件 |
: |
| 1. |
車両等により運搬する場合、運送者に運送注意書や、イエローカードを携帯させる。 |
| 2. |
運搬に際しては容器に漏れのないことを確かめ、転倒、落下、損傷がないように積み込み、或いは積み下ろしを行う。 |
| 3. |
タンク車(ローリー)等の荷役時は車止めをし、エンジンを止め、ホース等の結合を確認する。また、ホース の脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。 |
|
15.適用法令
| 労働安全衛生法 |
: |
施行令別表第1、危険物(引火性のもの)
施行令別表第6の2、有機溶剤(第2種有機溶剤)
施行令第18条、名称等を表示すべき有害物
法第57条の2、通知対象物 政令番号第182号 |
| 消防法 |
: |
危険物第4類第2石油類(非水溶性液体)指定数量1000L
|
| 船舶安全法 |
: |
危規則告示別表第5(引火性液体類、P.GU又はV)
|
| 航空法 |
: |
告示別表第3(引火性液体、P.GU又はV)
|
| 海洋汚染防止法 |
: |
施行令別表第1有害液体物質(C類物質) |
16.その他の情報
引用文献
1.産業医学 36巻、261-264(1994)
2.Registry of Toxic Effects of Chemical Substances(RTECS),NIOSH(Aug 1997)
3.Toxic.inVitro 6(6),pp489-490,1992 日本化学物質安全・情報センター、情報B、Vol.15(6),38,(1993)
4.ACGIH TLV勧告書Supplement:n-Butyl Acetate (1996)
5.野中 啓子:用水と廃水、22、1285-1295(1980)
6.Karel Verschueren :Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals
3rd ed. VAN NOSTRAND REINHOLD 361-363
7.国際化学物質安全性カード(ICSC)日本語版 第4集p294,化学工業日報社 発行
8.日本化学物質安全・情報センター、情報B、Vol.17(9),34,(1995)
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