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整理番号:No.24
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1985年 5月
改訂    2002年11月

1.製品の名称  フ ェ ノ ー ル


2.組成、成分情報

化学名 フェノール
別名 石炭酸、ヒドロキシベンゼン
成分及び含有量 99%以上
化学式 65OH (分子量94.11)
官報公示整理番号 化審法・安衛法(3)−481
CAS No. 108−95−2

3.危険有害性の要約

最重要危険有害性
有害性 劇物であり、腐食性がある。接触すると皮膚や目を侵す。
皮膚からも吸収されて中毒を起こすおそれがある。
中枢神経の抑制作用がある。
環境影響 生分解性良好。水生生物に有害である。
物理的及び化学的危険性 可燃性の固体。加熱されて発生する蒸気は爆発性混合ガスを作る。
分類の名称(分類基準は日本方式) 急性毒性物質、腐食性物質

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布等でおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。
この場合、医師の指導の下に行うことが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり、被災者に口からものを与えてはならない。
直ちに医師の手当てをうける。
皮膚に付着した場合 一刻でも早く洗浄を始め、入った製品を完全に洗い流す必要がある。
洗浄が遅れたり、不十分だと重度の皮膚障害の恐れがある。
汚染された衣類、靴などは多量の水をかけて洗いながしながら速やかに脱ぎ捨てる。
必要であれば衣服等を切断する。
その後、水または微温湯を流しながら最低20〜30分間、時計を見ながら洗う。
次いで、アルコールかポリエチレングリコール30が直ちに使える場合にはこれで洗う。
直ちに医師の手当てを受ける。
すぐに痛みがなく影響がなくとも障害が遅れて現れることがあるので必ず医師の診断を受ける。
目に入った場合 一刻でも早く洗浄を始め、入った製品を完全に洗い流す必要がある。
コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄する。
適温のゆるやかな流水により、15分以上、救急車が来るまで洗浄する。
生理食塩水が直ぐ入手出来れば使用する。洗浄を中断してはならない。
洗眼の際、瞼を指でよく開いて、眼球、瞼の隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
医師の手当てを受ける。
すぐに痛みがなく視力に影響がなくとも障害が遅れて現れることがあるので必ず医師の診断を受ける。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
水でよく口の中を洗わせる。
コップ1〜2杯の水を飲ませて胃の中の物質を希釈する。(牛乳がすぐ入手できれば水を飲ませた後に与えてもよい。)
嘔吐が自然に起こったときは、気管への吸入がおきないように身体を傾斜させる。
嘔吐後、再び水を飲ませる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。

5.火災時の措置

消火剤 噴霧水、粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素
特定の消火方法 火災発生場所の周辺に関係者以外の立入を禁止する。
初期の消火には粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素を用いる。
危険なく出来る場合は火元への燃料源を断つ。
大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤等を用いて空気を遮断することが有効である。
棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
周囲の設備等に散水して冷却する。移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。
消火を行う者の保護 消火作業は風上から行い、自給式呼吸器等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 作業の際には必ず保護具を着用し、飛沫等が皮膚に付着したり、目に入るのを防ぎ風上から作業する。
危険なく出来る時は漏洩を止める。
環境に対する注意事項 環境への影響を起こさないよう、河川などに排出しない。
除去方法  少量の場合
乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ、密閉できる容器に回収する。
大量の場合
盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。
二次災害の防止策 付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立入を禁止する。

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、眼、粘膜、皮膚との接触は薬傷を起こすので、適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.取扱い後は、石鹸を用いて、手洗い,洗顔を行う。又、衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発生させない。
6.取扱い場所では、火気、火花、アークを発するもの、高温点火源を付近で使用しない。
7.取扱場所で使用する電気計装機器等は防爆構造とし、裸電球を使用しない。機器類は静電気対策を講じる。
8.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、又は引きずる等の粗暴な取扱いをしない。容器から出し入れする時はこぼれないようにする。
9.流動によって静電気が発生する場合があるので、出し入れの容器にはアースを取る。
10.容器から凝固している内容物を取り出すときは、
日の当たる場所で自然融解させるか、水浴中で徐々に加温する。
11.70 ℃以上の温度での加熱及び直火過熱は避ける。
保管
  適切な保管条件 容器は直射日光を避け、通風の良い、冷暗所に保管する。
保管場所は火気厳禁とする。
酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。
使用済み容器は一定の場所を定めて集積する。
  安全な容器包装材料 容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。

8.暴露防止及び保護措置

設備対策 室内での取扱いは発散源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
取扱い場所付近に安全シャワー、洗眼、うがい、手洗装置を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
管理濃度 設定されていない。
許容濃度 日本産業衛生学会勧告値(2002年版)
5ppm(19mg/m3) (皮膚吸収あり)
ACGIH(2001年版)勧告値
TLV-TWA  5ppm(19mg/m3) (皮膚吸収あり)
保護具
呼吸器の保護具 有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器
手の保護具 耐油性保護手袋
目の保護具 保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具 耐油性保護長靴、耐油性前掛

9.物理的及び化学的性質

外観
  物理的状態 固体(常温)
  色 白色
臭い 特異臭
PH 測定項目に該当しない。
物理的状態が変化する特定の温度
/温度範囲
  沸点 181.8 ℃ 
  融点 41.0 ℃
引火点 79 ℃(密閉式)
発火点 715 ℃
爆発特性
  爆発限界 下限 1.7vol% 上限 8.6vol% 
蒸気圧 2.66kPa(85.3 ℃),20mmHg(85.3 ℃)
蒸気密度 3.24(空気=1)
密度(比重) 1.07(20 ℃)
溶解度 水 8.4g/100g( 20 ℃)、アルコール、エーテルとは自由に混合

10.安定性及び反応性

安定性 加熱されて発生する蒸気は、空気と一定の割合で混合すると爆発性混合ガスになる。
フェノールの蒸気は、空気より重いので低いところに滞留しやすい。
反応性 酸化剤との混触により、発熱、発火することがある。
避けるべき条件 酸化剤との接触を避ける。

11.有害性情報

<ヒトへの影響>
急性毒性 通常、人は1gのフェノールを飲むと死亡する可能性がある。
飲んだ場合は腹部の痛みと口、喉に強い薬傷を起こす。
呼吸はフェノール臭を帯び、顔は青くなり、チアノーゼ、虚脱、筋力低下、意識不明となる。通常、死亡は呼吸不全から起こる。1)
中枢神経抑制作用を有し、濃厚蒸気を多量に吸収した場合、神経系、特に呼吸中枢が侵され呼吸麻痺を引き起こす。
頭痛、めまい、虚脱、意識消失、昏睡が起こる。腎臓障害により排尿抑制作用が認められることもある。
2)
局所効果(皮膚、目) フェノール及び濃厚な溶液は皮膚、粘膜に腐食作用を及ぼし直ちに除去しないと第2もしくは第3度の薬火傷を引き起こす。
又、皮膚からの吸収があるため、全身的中毒作用が起こる場合もある。
2)
濃厚なフェノールはヒトの目に、結膜水腫、角膜の白色化、及び感覚の鈍麻を特徴とする激しい影響を及ぼす。
完全回復、部分的回復、失明、眼欠損にいたるまで種々の段階が報告されている。
2)
慢性・長期毒性 実験室でフェノール、クレゾール、キシレノールに長年( 13.5年)暴露(吸入、皮膚吸収)していた実験者の慢性中毒の報告によると症状は食欲不振、体重減少、足腕の筋肉痛、尿の黒色化、肝臓の肥大、肝機能の低下があった。暴露中止後、回復は遅かったが7ケ月後で体重は回復し、肝臓肥大はなくなったとしている。1)
発がん性 フェノールを生産又は使用する5つの工場で働く14,861人の作業者の死亡率を調べた。
フェノールに暴露する作業者の食道がん、腎臓がん、胃がん、Hodkins病の過剰を観察したが、いずれもフェノールに関係した用量ー反応関係は示さず、肺がんの過剰も示さなかった。
又、口腔・咽頭がん、胃がん、脳がん、動脈硬化、心臓病などの死亡率は低かった。4)
<動物実験>
急性毒性3)
経口 ラット LD50  317mg/kg
経口 マウス LD50  270mg/kg
吸入 ラット LC50  316mg/m3
吸入 マウス LC50  177mg/m3
経皮 ラット LD50  669mg/kg
局所効果15)
  目刺激性  ウサギ 5mg/30sec,リンス 弱い
  皮膚刺激性 ウサギ 500mg/24H   強い
ウサギ 100mg       弱い
慢性毒性・長期毒性 サル、ラット、モルモットに5ppm,8時間/日、5日/週で90日間反復暴露した実験では血液像、尿、病理組織像に異常は認められなかった。2)
発がん性 ラット、マウスに2,500ppm及び5,000ppmの濃度で103週間飲料水中に含有させ投与した実験ではB6C3F1系の雌雄マウス及びF344系の雌ラットには発癌性はなかった。
しかし、F344系の雄ラットの低投与(2,500ppm)群に白血病及びリンパ腫の発生が対照群にくらべて多かったという報告がある。5)
ACGIHの1997年版ではフェノールはA4[発がん物質として分類できない物質]としている。6)
IARCではフェノールをグループ3(ヒトに対する発がん性については分類できない)に分類している。
変異原性 大腸菌B/Sd-4菌株に対して変異原性があった。5)
サルモネラ菌(6菌株)に対しては変異原性はなかった。5)
タマネギの根端細胞による染色体異常試験の結果は陰性であった。7)
マウス骨髄多染性赤血球(PCE)の小核(Mn)誘導における毒性作用は認められなかった。
7)
生殖毒性3)
経口     ラット     TDLO 300mg/kg 受精後の死亡
経口 ラット TDLO 1,270mg/kg 胎児の発育不全
経口 マウス TDL0 2,300mg/kg 受精後の死亡
経口 マウス TDL0 2,600mg/kg 胎児の発育不全
経口 マウス TDL0 2,800mg/kg 胎児の発育不全 頭蓋骨顔面の異常
代謝排泄 フェノールは、皮膚、胃、腸、子宮、腹腔、皮下から速やかに吸収される。また、蒸気は経気道から速やかに吸収される。
体内に吸収されたフェノールは一部酸化され、また硫酸、グルクロン酸、他の酸と結合する。尿中へはフェノール及び酸結合体として排出される。
1)

12.環境影響情報

残留性/分解性 生分解性良好。BOD分解度は85%(2週間)8)
BODはTOD(理論酸素要求量)の70%という試験例がある。
9)
生態毒性
  魚毒性  コイ    LC50   48HR   85ppm10)
金魚   LC50   48HR   46mg/l11)
Gobius minutus   LC50   1HR   85mg/l12)
Guppy (ニジメダカ) LC50  24HR  30ppm(PH7.3)12)
Ophicephalus punctatus LC50 48HR 46.0mg/l12)
  その他 ミジンコ LC50  3HR 130ppm10)
その他 淡水魚(Chnna punctatus)を亜致死濃度のフェノールに暴露させ、暴露15日後に、脳及び筋肉組織内の代謝活性化をした結果、分解酵素を顕著に阻害し、グリコーゲン、グルコース、蛋白質は減少し、筋組織に比べ脳中アセチルコリンエステラーゼが上昇した。14)

13.廃棄上の注意

残余廃棄物 廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。
(1) ウエス、オガクズ等に吸着させ、焼却炉で少量ずつ焼却する。
(2) 助燃剤と共に焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
活性汚泥処理も可能である。
多量の場合は、免許を所有している専門業者に処理を委託する。
汚染容器・包装 空容器を廃棄するときは、内容物を完全に除去した後に処分する。

14.輸送上の注意

国連分類 6.1(毒物,PGU)
国連番号 UN1671(固体) UN2312(溶融状のもの)
輸送の特定の安全対策及び条件 車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人へ運送注意書(イエロー・カード)を渡す。
容器の破損、漏れのないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のな いように積み込み、荷崩れ防止を確実に行う。
タンク車(ローリー)等への充填、積み卸ろし時、平地に停車させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧力以下の圧縮ガスまたはポンプを用いて行う。
ホースによる注入作業はホースの結合部を確実に締め付け又は結合し たことを確認する。ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働安全衛生法 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)
施行令第18条の2 通知対象物質 政令番号第472号                         
特化則第2条施行令別表3(第3類物質)
規則第326条 : 腐食性液体
消防法 第9条の3政令別表第4指定可燃物(可燃性固体類) (3,000kg)
毒物及び劇物取締法 第2条別表第2 劇物
化学物質管理促進法 第一種指定化学物質 政令番号第266号
船舶安全法      危規則第3条 危険物告示別表第4 毒物類
航空法 別表第9 毒物
海洋汚染防法 施行令別表第1 有害液体物質(C類)
大気汚染防止法 施行令第10条 特定物質
水質汚濁防止法  施行令第2条別表第2 水質汚濁環境項目

16.その他の情報

文献

1. Clayton & Clayton : Patty's Industrial Hygiene and toxicology.(3rd.rev.Ed.)Vol.2

2. 堀口俊一:化学物質取扱い業務と健康管理 P275-80(1982)(財)産業医学振興財団

3. NIOSH :Registry of Toxic Effects of Chemical Substances.(1997)

4. M.Dosemecl.,Exective Plaza North,U.S.A. (Epidemiol,2(3),pp.188-193,1991)

5. NCI/NTP :Bioassay of Phenol for Possible Carcinogenicity.(1980)

6. ACGIH :Threshold Limit Values for Chemical Substances in the Work Environment.

7. 賀田恒夫・石館基:環境変異原データ集Ι(1980)

8. 化審法既存化学物質安全性点検データ集(化学品検査協会 1992.10)

9. A.L.Bridie et al.: Water Research 13 627, 1979

10.西内康治:生態化学 4(3), 45, 1981

11.A.L. Bridie et al.: Water Research 13 623, 1979

12.Handbook of Environmental Data on Organic Chemical

13.A.Marrazzini et al. :Universiti di Pisa,Italy(Mutat.Res.341,pp.29-46, 1994)

14.M.M.Reddy:Osmania University,India(J.Ecotoxicol.Environ.Monit.,3(1),pp13-17 1993)

15.RTECS:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances(2000)