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                    石 油 化 学 工 業 協 会  
整理番号:No.22          作成   1985年 5月28日
改訂    2000年 5月31日

1.製品の名称  イソプロピルアルコール


2.組成、成分情報

化学名 イソプロピルアルコール
(別名:イソプロパノール、2-プロピルアルコール、略称 IPA)
含有量 99.9%以上
化学式 CH32CHOH  (分子量 60.10 )
官報公示整理番号 化審法・安衛法 (2)−207
CAS No. 67−63−0

3.危険・有害性の要約

分類の名称 引火性液体、急性毒性物質
有害性 高濃度の蒸気を吸入すると急性中毒を起こすことがある。眼、鼻、のどへの
接触で刺激性がある。
環境影響 生分解性されやすい。生態毒性は強くはない。
危険性 引火性の強い液体 (引火点 11.7 ℃)

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などでおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
医師の診断を受ける。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服等を切断する。
その後、水または微温湯を流しながらよく洗浄する。
石けんを使ってよく洗い落とす。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は医師の手当を受ける。
目に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄する。
最低15分間洗浄した後、直ちに眼科医の手当を受ける。
洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
水でよく口を洗わせる。口から何も与えてはならない。
嘔吐が自然に起こったときは、気道への吸入が起きないように身体を傾斜させる。
保温して速やかに医師の診断を受ける。

5.火災時の措置

消火剤 大量の水、粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素
消火方法 初期の消火には水(霧状水)、粉末、二酸化炭素などを用いる。
大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤などを用いて空気を遮断する

ことが有効である。 棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
火災発生場所の周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
周辺火災の場合には周囲の設備などに散水して冷却する。移動可能な容器は
速やかに安全な場所に移す。
消火を行う者の保護 消火作業の際には自給式呼吸器、保護手袋、保護眼鏡、保護帽(ヘルメット)、
耐熱性の保護衣を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 1.漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
2.作業の際は保護具を着用し飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように
 注意し、風上から作業する。
3.風下の人を退避させる。
環境に対する注意事項 1.付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
除去方法 1.危険なくできるときは漏洩部を止める。
2.漏出した場所の周辺から人を退避させると共に火災爆発の危険性を警告する。
3.少量の場合
 乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
4.大量の場合
 盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
 この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。 

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じて保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取り扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.取扱後、手洗い洗顔等を十分に行い、又衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発散させない。
6.引火しやすいため、火気、火花、アークを発生するもの又は高温点火源を付近で使用しない。
7.取扱い場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類は静電気対策を講じる。
容器取扱い 8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、または引きずる等の乱暴な取扱いはしない。
 容器から出し入れするときは、零れないようにする。

10.流動によって静電気が発生する場合があるので出し入れの容器にはアースをとる。
保管 1.使用済み容器は一定の場所を定めて保管する。
2.容器は直射日光を避け、通風のよい、冷暗所に保管する。
3.管場所は火気厳禁とする。
4.
酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。

8.暴露防止及び保護措置

管理濃度 400 ppm
許容濃度 日本産業衛生学会勧告値(1999)
  最大許容濃度 400 ppm (常時この濃度以下に保つこと)
ACGIH 勧告値 (2000年確定リスト)
  TLV - TWA  200 ppm
  TLV - STEL  400 ppm
設備対策 (1) 室内での取扱いの場合は発生源の密閉化又は局所排気装置を設ける。
(2) 取扱い場所の近くには安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を
   明瞭に表示しておく。
保護具 呼吸器系保護具:有機ガス用防毒マスク、高濃度の場合は空気呼吸器
手の保護具   :不浸透性ゴム手袋
目の保護具   :ゴーグル型眼鏡、保護面

9.物理的及び化学的性質  1) 3) 8) 10) 

外観 芳香臭のある揮発性液体、無色透明
沸点 83 ℃
融点 -90 ℃
引火点 11.7 ℃ (CC)、 18.3 ℃ (OP)
爆発範囲 2.0 〜12.7 vol%
自然発火点 455 ℃
蒸気圧 4.4 kPa ( 33 mmHg ) ( 20 ℃ )
蒸気比重 2.1 (空気=1)
比重 0.79
溶解性 水、アルコール、エーテル、その他ほとんどの有機溶剤とよく混合する。
オクタノール/水分配係数 log Pow < 0.28 1), = 0.05 (実測値)  8) 
比熱 2.55 J/g℃ ( 0.608 cal/g℃ )
粘度  2.431×10-3Pa・s ( 2.431 cp ) ( 20 ℃ )

10.安定性及び反応性

保管が長期にわたると過酸化物が生成することがあるので取り扱いにあたっては注意を要する。  11)
強酸化剤と反応する。 プラスチックやゴムを侵すことがある。

11.有害性情報

  1.ヒトへの健康影響

   ・ボランティアによる実験では 400 ppm で、眼、鼻、のどに弱い刺激作用がみられ、800 ppm では
    その作用が増すが強いというほどではなかった。   3)
   ・ACGIH の許容濃度は眼などへの刺激作用と麻酔作用を防ぐという観点から決められている。  3)
   ・ヒトでの経口の推定致死量は 240 ml である。但し 20 ml でも中毒を起こす。  3)
   ・急性中毒では急激な血圧低下、吐き気、嘔吐、嗜眠、頭痛、麻酔作用が見られる。  3) 8)
  

  2.動物への影響

   (1)急性毒性  5)

経口 ラット LD50 4,700〜5,840 mg/kg
マウス LD50 4,500 mg/kg
吸入 ラット LC50 19,000〜22,500 ppm (8時間暴露)
経皮 ウサギ LD50 12,900 mg/kg

   (2)刺激性  8)

    ・皮膚刺激性  ウサギ   500 mg   軽度
    ・目刺激性    ウサギ    10 mg   中等度、  100 mg   中等度〜重度

   (3)感作性

     報告が見られない。

   (4)反復投与毒性  4) 8)

    ・ラット、マウスに6時間/日、5日/週、13週間、濃度 0, 100, 500, 1500, 5000 ppm で吸入暴露 した結果、
     5000 ppm で一時的な中枢神経抑制作用がみられた。その他の影響はみられなかった。
    ・吸入暴露でがん原性試験における腫瘍以外の無有害作用濃度 (NOAEL) はマウス、ラットともに
     500 ppm であった。
    ・ラットでの27週間飲水投与では 1000 mg/kg/d. 以上で体重増加の抑制がみられている。

   (5)神経毒性  4) 8)

    ・ラットを用いた急性神経毒性試験では、1500 ppm 以上で麻酔作用がみられた。無有害作用濃度
     (NOAEL) は 500 ppm である。
    ・イソプロパノールはエタノールの2倍の強さで中枢神経系を抑制する。

   (6) 慢性毒性

     報告がみられない。

   (7)変異原性

    ・エームス試験で陰性  4) 5)
     
・ラットを用いた染色体異常試験で陽性  8)
     
・マウスを用いた小核試験で陰性  4) 5)

   (8)発がん性

    ・IARC による発がん性の評価 : グループ3(ヒトに対する発がん性については分類できない)
    ・ACGIH による評価        :  A4  (2000年確定リスト)
                              (発がん性物質として分類できない物質)

   (9)催奇形性  4) 8)

    ・ラットを用いて妊娠6〜15日の10日間、0, 400, 800, 1200 mg/kg/day の用量で強制投与したところ、
     800 mg/kg/day 以上で母動物に死亡がみられ、胎児体重が減少したが、奇形はみられていない。
    ・ウサギに 0, 120, 240 及び 480 mg/kg/day を妊娠6〜18日の13日間投与したところ、480 mg/kg/day で
     母動物に死亡、体重増加の抑制、摂餌量の減少がみられたが、胎児への影響はなく奇形もみられて
     いない。

   (10)生殖毒性  4) 8)

    ・ラットに 0, 100, 500, 1000 mg/kg/day を投与した2世代生殖毒性試験で、無有害作用量 (NOAEL) は
     500 mg/kg/day であった。

   (11)代謝・排泄  5) 8)

    ・IPA は消化器や肺から容易に吸収される。
    ・吸収されたIPAは一部そのまま呼気、尿に排出されるほか、80〜90 % は肝臓のアルコール脱水素酵素
     によりアセトンになる。アセトンは一部そのまま排泄され、大部分は酢酸をへて二酸化炭素になる。
    ・IPA を誤って飲んだ6人の例では、IPA とアセトンの半減期はそれぞれ2.9〜16.2時間と7.6〜26.2時間
     であった。


12.環境影響情報  6)

生分解性 BOD5 理論酸素要求量の 7 % ( 10 mg/l, 非馴化汚泥、誘導期間5日間)
      〃  〃      72 % (馴化汚泥)
BOD20  〃  〃      70 % ( 10 mg/l, 非馴化汚泥)
以上より生分解性は良好と判断され、「化審法」の既存化学物質点検でも分解性良好と報告 7)
されている。
濃縮性 オクタノール/水分配係数の値 ( log Pow < 0.28 , = 0.05 (実測値) )より推定して蓄積性は低い。
生態影響 魚     fathead minnow     LC50 (96hr)  11,130 mg/l
ミジンコ  Daphnia magna  繁殖阻害  EC50   3,010 mg/l
                         NOEC  2,100 mg/l
藻類    Scenedesmus quadricauda   増殖阻害  EC50 (7d)  1,800 mg/l

13.廃棄上の注意

  廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。廃棄物の処理及び清掃に関する法律 を遵守する。

  1. おがくず、ウエス等に吸収させ焼却炉で焼却する。
  2. 焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
  3. 燃えにくい場合は助燃材とともに燃焼させる。
  4. 免許を有している専門業者に処理を委託する。
  5. 空容器を廃棄するときは、内容物を完全に除去した後に処分する。

14.輸送上の注意

  国連分類  :  クラス3 (中引火性液体 P.G.3 )
  国連番号  :  1219

  1. 車両等によって輸送する場合は、荷送人は運送人に運送注意書、イエローカードを携帯させる。
  2. 容器の破損、漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み荷崩れ防止を確実に行う。
  3. タンク車(ローリー)等への充填、積み下ろし時は、平地に停止させ、車止め、接地を行い、タンク車の許容圧力以下の
    圧縮ガスまたはポンプを用いて行う。
  4. ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
  5. ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働安全衛生法 法57条 名称等を表示すべき有害物
   施行令別表第9、通知対象物(MSDS関連)
   施行令別表第1 危険物(引火性のもの)
   有機則 第2種有機溶剤
消防法 危険物第4類 アルコール類 (指定数量 400 l)
船舶安全法 危規則 第3条告示別表第5 引火性液体類

16.その他の情報

  文献:

  1. 国際化学物質安全性カード(日本語版及び英語版)
    2000年1月 インターネット検索 http://www.nihs.go.jp/ICSC/
  2. 危険物ガイド、消防庁危険物規制課監修 東京法令出版(1993)
  3. ACGIH, Documentation of TLV ( 1994 )
  4. R.W.Kapp, et al., Regul. Toxicology Pharm. 23, 183-192 (1996)
  5. Patty's Industrial Hygiene and Toxicology, 4 th ed., p 2627- 2635 (1994)
  6. Karel Vershuren : Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals,
    3 rd. ed.,(1996)
  7. 通産省公報 1993年12月28日
  8. 化学物質ハザードデータ集 2 化学品検査協会編 第1法規出版発行(1999)
  9. IARC MONOGRAPHS, VOL.71,1027(1999)
  10. 化学物質の安全性評価 ― 国連IPCS環境保健クライテリア抄訳 第3集 p.76,
    化学工業日報社(1998)
  11. ブレスリック 危険物ハンドブック 第5版 田村監訳 (1998) 丸善