HOME > 製品安全データシート > スチレン
                    石 油 化 学 工 業 協 会  
整理番号:No.20          作成   1984年5月16日
改訂   2000年5月31日

1.製品の名称  スチレン


2.組成、成分情報

化学名 スチレン
(別名:ビニルベンゼン、フェニルエチレン)
含有量 99%以上
化学式 65-CH=CH2  (分子量 104.15)
官報公示整理番号 化審法・安衛法 (3)−4
CAS No. 100−42−5

3.危険・有害性の要約

分類の名称 引火性液体、急性毒性物質
有害性 高濃度の蒸気を吸入すると急性中毒を起こすおそれがある。
長期の暴露では頭痛、疲労感、吐き気、目まいが起こり得る。
皮膚と眼に中程度の刺激性がある。
環境影響 水生生物に中程度の毒性がある。
低い濃度でも臭気がする。
危険性 引火性の液体。空気との爆発性混合ガスを形成しやすい。
加熱等により重合し、発熱し、爆発に到るおそれがある。

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などでおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うことが望ましい。医師の指示なしに酸素以外の投薬をしたり、被災者に口からものを与えてはならない。直ちに医師の手当てを受ける。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服等を切断する。
その後、水または微温湯を流しながら良く洗浄する。
石鹸を使ってよく洗い落とす。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は医師の手当てを受ける。
目に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着してない限り、取り除いて洗浄する。
最低15分間洗浄した後、直ちに眼科医の手当を受ける。
洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
揮発性液体なので、吐き出させるとかえって危険性が増す。
水でよく口の中を洗わせる。口から何も与えてはならない。
嘔吐が自然に起こったときは、気管への吸入が起きないように身体を傾斜させる。
保温して速やかに医師の手当てを受ける。

5.火災時の措置

消火剤 粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素
消火方法 火災発生場所の周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
初期の消火には、粉末、二酸化炭素などを用いる。
大規模火災の際には、泡消火剤などを用いて空気を遮断することが有効である。
棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
周辺火災の場合、周囲の設備などに散水して冷却する。
移動可能な容器は、速やかに安全な場所に移す。
消火を行う者の保護 消火作業の際には、自給式呼吸器等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 1.漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
2.作業の際は保護具を着用し飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように
 注意し、風上から作業する。
3.風下の人を退避させる。
環境に対する注意事項 1.付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
除去方法 1.危険なくできるときは漏洩部を止める。
2.漏出した場所の周辺から人を退避させると共に火災爆発の危険性を警告する。
3.少量の場合
 乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
4.大量の場合
 盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
 この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。 

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。

3.室内で取り扱う場合は蒸気の発生源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.
取扱後、手洗い洗顔等を十分に行い、又衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発散させない。
6.
引火しやすいため、火気、火花、アークを発生するものまたは高温点火源を付近で使用しない。
7.
取扱場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類は静電気対策を講じる。
(容器取扱い 8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、または引きずる等の乱暴な取り扱いをしない。
 容器から出し入れするときは、こぼれないようにする。
10.流動によって静電気が発生する場合があるので出し入れの容器にはアースをとる。
11.使用済み容器は一定の場所を定めて保管する。
保管 1.容器は直射日光を避け、通風の良い、冷暗所(25℃以下)に保管する。
2
.保管場所は火気厳禁とする。
3.
酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。
4.重合を防止するため、必要に応じ重合防止剤の濃度をチェックする。
5.貯蔵期間は極力短くする。

8.暴露防止及び保護措置

管理濃度 50 ppm
許容濃度 日本産業衛生学会(1999):50 ppm
ACGIH (TLV-TWA) (1999) :20 ppm
     (TLV-STEL) (1999) :40 ppm
設備対策 (1)室内での取扱の場合は発生源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
(2)取扱場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
保護具 呼吸器系保護具:有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器
手の保護具   :保護手袋
目の保護具   :保護眼鏡

9.物理的及び化学的性質

外観 無色透明な液体
臭気 特有の強い臭い
PH 該当しない
沸点 145.2 ℃
融点 -30.6 ℃
引火点(C.C.法) 32 ℃
発火点 490 ℃
爆発範囲(空気中) 下限 1.1 vol%、上限 6.1 vol%
蒸気圧 0.60 kPa (4.5 mmHg )( 20 ℃ )
蒸気密度 3.6 (空気=1)
比重 0.9044 ( 25/25 ℃ )
溶解性 水への溶解度 300 mg/l ( 20 ℃ )
アルコール、エーテル、酢酸エステルとは自由に混合する。
オクタノール/水分配係数 log Pow = 3.2 10)

10.安定性及び反応性

空気(酸素)、光、加熱、過酸化物の存在により、重合しやすくなる。
重合すると発熱し、さらに重合が加速され着火、爆発するおそれがある。
重合防止剤を添加している。

11.有害性情報

  1.ヒトへの健康影響

   ・急性毒性

@.臭気閾値の報告値は、0.017−1.9 ppm (幾何平均値 0.32 ppm )の範囲である。
   100 ppm では強い臭気があるが、慣れを生じやすい。 1)
A.200 ppm 以上で眼と上部気管支に刺激作用がみられる。
   200−700 ppm で眠気、吐き気、頭痛、疲労、めまいがみられる。 1)

   ・ 刺激性

液のスチレンは皮膚に刺激作用がある。長期間接触すると水泡や皮膚炎が生じる。
これは脱脂作用によると思われる。 1)

   ・変異原性

作業者についての25の細胞遺伝学的試験が行われている。陰性の結果も陽性の結果も出ている。これらの結果と用量との明らかな関係はみられず解釈が難しい。染色体異常が陽性になることが多く、姉妹染色分体交換と小核試験は陰性になることが多い。 3)

   ・生殖毒性

スチレンに曝露されたと思われる婦人労働者での自然流産の頻度の調査結果
では、報告の多くはスチレン曝露と流産増加の危険との関係はみられないと
している。 5)

   ・神経毒性

スチレンの職業性曝露によって、感覚神経伝導や色覚への影響がみられたという
報告がある。 1) 
しかし、曝露濃度との関係、特に許容濃度( 50 ppm )付近でも影響あるかどうかに
ついては明らかでない。 

   ・吸収、代謝、排泄

@.ヒトでの主たる代謝ルートはスチレン(SM)→スチレンオキシド(SO)→
   スチレングリコール(SG) である。SG はさらに代謝されてマンデル酸、
   フェニルグリオキシル酸となって尿中に排泄される。 5) 
A.尿中代謝物濃度の減少は2相の直線となり、半減期はフェニルグリオキサル酸
   は10と26時間で あり、マンデル酸は4〜9時間と17〜26時間である。 1)


  2.動物への影響

   ・急性毒性

経 路 動物種 結    果 文献
経 口 ラット
マウス
LD50 5,000 mg/kg
     316 mg/kg
1)
2)
吸 入 ラット
マウス
LC50 2,770 ppm/4時間
     4,940 ppm/2時間
1)
1)
経 皮    報告されていない。 2)


   ・刺激性

@.EUの危険な物質リストではスチレンは目刺激性でかつ皮膚刺激性である物質に分類されている。 3)
A.OECD法によるウサギを用いた目刺激試験結果は刺激性指数が 6.7/110 と報告されている。 4)
   これによれば目刺激性は中程度か弱いとなる。 
B.以上から皮膚刺激性、目刺激性とも中程度で有機溶剤類としては強い方と思われる。

   ・感作性 1)

広く使われているが感作性があったという報告は見あたらない。

   ・亜急性毒性、慢性毒性 1)

経路 動物種 投与条件 結  果
吸入 ラット
モルモット
650−2000 ppm
7時間/日、5日/週
6ヵ月
650 ppm 無作用量レベル
1300 ppm 眼と鼻の刺激症状
2000 ppm 成長速度の低下
ウサギ 2000 ppm
7時間/日、5日/週
5ヵ月
影響みられず
経口 ラット 66.7−667 mg/kg/日
185日
133 mg/kg/日 無作用量
400 mg/kg/日 肝臓と腎臓の肥大
ラット 200, 400 mg/kg/日
5日/週 100日
200 mg/kg/日 無作用量
400 mg/kg/日 肝細胞の変質など
イ ヌ 200, 400, 600 mg/kg/日
580日
200 mg/kg/日 無作用量
400 mg/kg/日 肝臓でわずかな組織
病理学上の影響がみられた

   ・変異原性

in vitro の試験では陰性の結果が多いが、代謝活性化の条件によっては陽性という結果もある。 5)

   ・発がん性

@.IARC は 2B (ヒトに対し発がん性を示す可能性がある)に分類している。
   しかし、又 ACGIH は A4 (ヒトの発ガン性については分類できない。)である。
A.疫学調査及び動物実験がそれぞれ10件近く行われているが、明らかに発がん性がみられたという報告はない。
B.最近おこなわれた NTP のラットを用いた吸入による試験では発がん性は認められないという結果になっている。
   曝露濃度は 0, 50, 200, 500, 1000 ppm である。 6)

   ・生殖毒性・催奇形性

@.3世代生殖毒性試験。ラットにスチレンを 0, 125, 250 ppm 飲料水に溶かして摂取させた。生殖毒性みられず。 1)
A.発生毒性。妊娠しているラット、ウサギ等に経口又は吸入でスチレンを投与した。
   催奇形性、胎子毒性はみられないと報告されている。 1)

   ・神経毒性

ラットに 50, 200, 800 ppm 濃度で6時間/日、7日/週、13週間、吸入曝露する。
200 ppm は無作用濃度で、800 ppm では聴覚毒性がみられた。 1)

12.環境影響情報

生分解性 生分解性は良好。化審法条件(スチレン濃度 30 ppm、汚泥 100 ppm )
2週間での分解率は 100 % である。 7)
生態影響 fathead LC50 (24, 48, 96hr) :56.7, 53.6, 46.4 mg/l  8)
bluegill LC50 (24, 48, 96hr) :25.1, 25.1, 25.1 mg/l  8)
ヒメダカ            96hr LC50 30 mg/l  9)
ミジンコ 急性遊泳阻害   24hr EC50 27 mg/l  9)
ミジンコ 繁殖         21日 NOEC 8.5 mg/l 9)
藻類   増殖阻害      72hr EC50 202 mg/l  9)
その他 魚の着臭の原因となる。

13.廃棄上の注意

  廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。

  1. おがくず、ウエス等に吸収させ焼却炉で焼却する。
  2. 焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
  3. 燃えにくい場合は助燃材とともに燃焼させる。
  4. 多量の場合は、免許を所有している専門業者に処理を委託する。
  5. 空容器を廃棄するときは、内容物を完全に除去した後に処分する。

14.輸送上の注意

  国連分類 : クラス3 (引火性液体 P.G.3) 
  国連番号 : 2055  (安定剤入りのもの)

  1. 車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人へ運送注意書、(イエローカード)を渡す。
  2. 容器の破損、漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み荷崩れ防止を確実に行う。
  3. タンク車(ローリー)等への充填、積み卸し時は、平地に停止させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧以下の圧縮ガス又はポンプを用いて行う。
  4. ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
  5. ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働基準法 施行規則別表第1の2、第4号1の労働大臣が指定する物質
労働安全衛生法 法57条 名称を表示すべき有害物
令別表第1 危険物(引火性の物)
有機則 第2種有機溶剤

施行令別表第9、通知対象物(MSDS関連)
消防法 危険物第4類第2石油類(非水溶性)(指定数量1,000 l)
悪臭防止法 施行令1条 悪臭物質
船舶安全法 危規則 別表第5 引火性液体(高引火点引火性液体)
海洋汚染及び海上災害の
防止に関する法律
ばら積み輸送 有害液体(B類)
個品輸送 海洋汚染物質(P)
航空法 告示別表第3 引火性液体
化学物質管理促進法 第一種指定化学物質

16.その他の情報 

  文献:

  1. ACGIH : Doccumentation of TLV (1997)
  2. NIOSH : Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (1999)
  3. JETOC : 特別資料 No.97 EU 危険な物質リスト (1996年3月)
  4. ECETOC: Technical Report No.66 (March 1992)
  5. IARC : Monographs of the evaluation of carcinogenic risks to humans Vol.60
    (1994)
  6. STYRENE 104-Week Repeated Dose Inhalation Combined Toxicity/Carcinogenicity
    Study in Rat (1996)−米国NTPとスチレン業界が共同で行った試験の報告書−
  7. 化審法の既存化学物質安全性点検データ集 (JETOC) (1992)
  8. K. Verschueren : Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals, 3rd ed.
    (1996)
  9. 環境庁:環境と化学物質 日本環境協会 (1989)
  10. 国際化学物質安全性カード(ICSC)日本語版 化学工業日報社 (1992)