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整理番号:No.17
石 油 化 学 工 業 協 会
作成   1983年 5月
改訂   2005年 2月

1.製品の名称  イソブタノール


2.組成、成分情報

化学名 イソブタノール
別名 イソブチルアルコール、2-メチルプロパノール
含有量 99%以上
化学式 (CH CHCH OH (分子量74.12)
官報公示整理番号(化審法・安衛法) (2)−3049
CAS No. 78-83-1

3.危険有害性の要約

最重要危険有害性
  有害性 吸入及び飲み下すと有害である。目に重大な障害を及ぼす恐れがある。
  環境影響 生分解性があり魚毒性も低い。
  物理的及び化学的危険性 可燃性である。
分類の名称(分類基準は日本方式) 引火性液体、急性毒性物質
  主要な症候 過度の暴露は頭痛、めまい、し(嗜)眠、麻酔状態を引き起こすことがある。また、眼や鼻、喉への刺激が現れる事もある。

4.応急措置

吸入した場合 被災者をただちに空気の新鮮な場所に移し、安静、保温に努め、速やかに医師の手当てを受ける。呼吸が停止している場合には人工呼吸を行い、呼吸困難な場合には酸素吸入を行う。
皮膚に付着した場合 汚染した衣服や靴を脱ぎ、触れた部位を多量の水で洗い流す。もし、皮膚に炎症を生じた場合は医師の手当てを受ける。
目に入った場合 ただちに清浄な水で15分以上洗眼した後、医師の手当てを受ける。コンタクトレンズを使用している場合は、固着していない限り、取り除いて洗浄する。洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたのすみずみまで水がよく行きわたるように洗浄する。
飲み込んだ場合 水でよく口の中を洗浄する。可能であれば吐き出させ、直ちに医師の手当てを受ける。被災者に意識が無い場合には、口から物を与えたり、吐かせようとしてもいけない。

5.火災時の措置

消火剤 粉末、二酸化炭素、泡消火剤
特定の消火方法 火元への燃焼源を断ち、消火剤を用いて消火する。又、延焼の恐れのないように水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
危険を伴わず実施できるなら、火災区域から容器を移動する。棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
消火を行う者の保護 消火作業は風上から行い、場合によっては呼吸保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 1.風下の人を退避させる。
2.漏洩した場所の周辺にはロープを張るなどして、人の立ち入りを禁止する。
3.
作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業しない。
環境に対する注意事項 漏出物が河川等、公共水域に流されないように留意する。
除去方法 1.少量の場合、漏洩した液は土砂、おがくず、ウエスなどに吸着させて密閉できる空容器に回収する。
2.大量の場合、漏洩した液は土砂などで流れを止め安全な場所に導いた後、液の表面を泡などで覆い、できるだけ容器に回収する。
二次災害の防止策 熱、炎、スパークなど着火源となるものを速やかに取り除くと共に、消火剤を用意する。

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸い込んだり、眼、皮膚及び衣類に触れないように、適切な保護具を着用し、できるだけ風上から作業する。
2.静電気対策を行い、作業衣、作業靴は導電性のものを用いる。
3.漏れ、あふれ、飛散しないようにし、みだりに蒸気を発生させない。
4.高温物、スパーク、火炎を避け、強酸化剤との接触を避ける。
5.使用済みの容器は一定の場所を定めて集積する。
6.容器を転倒させ、落下させ、衝撃を加え、または引きずる等の粗暴な取扱いをしない
保管
  適切な保管条件 1.保管場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類はすべて接地する。
2.容器は直射日光を避け涼しい場所に貯蔵し、密閉して、空気との接触を避ける。
3.ボイラーなど熱源付近や可燃物の近くに置かない。
4.酸化性物質、有機過酸化物などと同一場所に置かない。
5.火気厳禁
6.消防法 危険物第4類第2石油類(非水溶性液体)の適用法規に従って保管する。
  安全な容器包装材料 耐火性の容器を使用する。

8.暴露防止及び保護措置

設備対策 屋内作業での使用の場合は発生源の密閉化、又は局所排気装置を設置することがのぞましい。
取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示する。
管理濃度 50ppm (旧労働省告示第26号1995年)
許容濃度 日本産業衛生学会(2004年版) 時間加重平均値50ppm(150mg/m3
ACGIH(2004年版)  TLV-TWA 50ppm
保護具
呼吸器の保護具 有機ガス用防毒マスク、送気マスク、空気呼吸器等
手の保護具 耐溶剤性(不浸透性)の手袋
目の保護具 ゴーグル等
皮膚及び身体の保護具 保護服、保護長靴(帯電防止用)、保護前掛け等

9.物理的及び化学的性質

外観
  物理的状態 液体
  色 無色透明
  臭い 特有な臭い
pH 測定項目に該当しない。
物理的状態が変化する特定の温度/温度範囲
  沸点 108℃
  融点 -108℃
引火点 28℃(密閉)
発火点 415℃
爆発特性
  爆発限界 1.7〜10.9 vol%
蒸気圧 1.2 kPa (=9mm Hg)  (20℃)
相対蒸気密度(空気=1) 2.55
密度 0.803 g/cm3
溶解性
  溶媒に対する溶解性
    水への溶解度 8.7g/100g (20℃)
   水の溶解度 16wt% (20℃)
    溶媒の溶解性 殆どのアルコール、エーテル、ケトン、エステル等に溶ける。
オクタノール/水分配係数 logPow=0.8

10.安定性及び反応性

安定性 通常条件では安定。
反応性 自己反応性無し。アルミニウムと反応して引火性ガス(水素)を発生する。
避けるべき条件 高温、火炎、スパーク及び着火源
避けるべき材料 強酸化剤、アルミニウム
危険有害な分解生成物 燃焼等によりCO等の有害ガスを発生する恐れがある。

11.有害性情報

 

ヒトへの影響
  急性毒性 吸入により咳、めまい、し眠、頭痛、および中枢神経に影響を与える。高濃度の場合、意識低下を起こすことがある。 1)
経口では下痢、吐き気、嘔吐が起きる。 1)
  局所効果(皮膚、目など) 蒸気は眼、気道を刺激する。眼は発赤、痛み、かすみ眼になる。 1)
皮膚に触れると乾燥とともに軽度の紅斑が見られた。 2)
  慢性毒性・長期毒性 反復してあるいは長期間の皮膚への接触は皮膚炎を起こすことがある。 1)
  発がん性 ACGIHの発がん性あるいは発がん性を疑われる物質には指定されていない。IARCモノグラフには評価対象物質としてとりあげられていない。NTPで発がん物質又は潜在的発がん物質に指定されていない。
動物への影響
  急性毒性
経口 ラット LD50  2.46 g/kg 2)
経皮 ウサギ LD50  3.4 g/kg 2)
吸入 ラット LCLo 8000 ppm/4時間 3)
マウス 10600 ppm/300分、15950 ppm/250分で致死 2)
  局所効果(皮膚、目など)
   皮膚刺激 ウサギ ウサギの皮膚に弱い刺激性がある。2)
   目刺激 ウサギ ウサギの眼に中程度〜強い刺激性がある。 2)
  慢性毒性・長期毒性 雌雄のラットに飲料水に混ぜて、0、1,000、4,000、16,000 ppm を3ヶ月投与した(各々0.80、340、1,450 mg/kgに相当する)。
臨床所見、体重、血液学及び血清学的検査項目、臓器重量及び組織病理学的な異常は見られなかった。
2)
雌雄のラットに0、100、316、1,000 mg/kg/日の経口投与を13週間行った。316 mg/kg/日以下では、体重への影響、臨床及び組織病理学的変化は見られなかった。 2)
  発がん性 19匹のラットに週2回、0.2ml /kg/回を495日間経口投与した結果、3匹に悪性腫瘍が認められた。また、24匹のラットに週2回、0.05 ml/kg/回544日間皮下注射した結果、8匹に悪性腫瘍が認められた。(経口投与、皮下注射とも対象群の各25匹には悪性腫瘍は認められなかった。) 
この試験はがんのリスク評価には不適切である、と評価されている。
2)
  変異原性 ネズミチフス菌(サルモネラ菌)TA98, TA100, TA1535, TA1537, TA1538及びE. coli WP2 uvrAの菌株を用いた変異原性試験では陰性であった。5)
  生殖毒性 ウサギの妊娠第7日〜19日に、0、0.5、2.5、10 ml/Lを1日6時間吸入暴露した(各々0、165、825、3,300 ppmに相当する)。高用量ではとくに暴露初期に、わずかな体重減少により証明されるように、母体毒性が見られた。胎仔毒性が及び発生への影響は無かった。低投与群ではこれらの影響は見られなかった。尚、ラットの妊娠第6日〜15日に同様の試験を行ったが、母体毒性、胎仔毒性、発生への影響は見られなかった。2)
  代謝・排泄 イソブタノールは肺、胃腸から速やかに吸収される。イソブタノールはウサギ、イヌではグルクロン酸抱合を受ける。ウサギでは少量(4%)が抱合排出され、その他はイソブチルアルデヒド、イソ酪酸に酸化され、最終的にアセトンと二酸化炭素になる。6)
  その他(神経毒性等) イソブタノールの毒性は主としてアルコール中毒と麻酔性である。経口投与による動物の中毒症状は自発行動の麻酔及び喪失である。ラットとウサギに種々の濃度を4時間吸入暴露すると、15,700 mg/m3では気道の刺激があり、3日後に中枢神経の機能低下が起こり、骨髄中のリンパ球の大幅な減少、血液中の乳酸塩の減少、血液中からのブロモフタレインの脱離の遅れ、そして肝細胞と脳の嗅覚ニューロンの発育不良を含む組織の変化が起こった。8,000 mg/m3では症状は、15,700 mg/m3投与と同等かそれ以下であった。1,300 mg/m3では骨髄中のリンパ球の減少が見られた。100 mg/kgでは呼吸頻度が変調したのみであった。7) イソブタノールはラットの脳神経連接における神経伝達物質の取り込みを阻害する。イソブタノールはチャイニーズハムスターの卵巣由来培養細胞(CHO)におけるタンパク質形成を阻害する。4)

12.環境影響情報

移動性 物理化学的性質からみて大気、水域環境に移行しうる。
残留性/分解性 化審法既存化学物質点検結果では、生分解性良好に分類されている。8)
生態毒性
  魚毒性 ブリーク(コイ科)  LC50.(96時間)  1000〜3000 mg/L 7)
金魚          LC50(24時間)   2600 mg/L 7)
  その他 ミジンコ        EC50(24時間)   1250 mg/L 7)

13.廃棄上の注意

残余廃棄物 焼却炉の火室へ噴霧し焼却するか、少量の場合は珪藻土等に吸着させて開放型の焼却炉で焼却する。
廃棄を外部に委託する場合は、免許を持った産業廃棄物処理業者に、内容物を明確にして処理を委託する。
汚染容器・包装 空容器を廃棄する場合、内容物を完全に除去した後に処分する。洗浄水等は、活性汚泥等の処理により清浄にしてから排出する。

14.輸送上の注意

国際規制
  IMDG(国際海上危険物規則)コード クラス3(引火性液体類 P.G.V)、UN1212
  ICAO-TI(国際民間航空機関技術指針)
  /IATA-DGR(国際航空運送協会危険物規則)
クラス3(引火性液体)
国連分類 クラス3(引火性液体、P.G.V)
国連番号 UN1212
国内規制 消防法 危険物第4類 第2石油類(非水溶性液体、指定数量=1000L)
船舶安全法 危規則 危険物 引火性液体類
航空法 危険物 引火性液体
輸送の特定の安全対策および条件 1.引火性液体であるので火気厳禁である。
2.車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人にイエローカードを携帯させる。
3.運搬に際しては容器に漏れの無いことを確かめ、転倒、落下、損傷等が無いように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
4.タンク車(ローリー)等への充填、積み下ろし時は平地に停車させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧以下の圧縮ガスまたはポンプを用いて行う。
5.ホースの着脱時は、ホース内の残留物の処理を完全に行う。
6.ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

消防法 法第2条危険物第4類引火性液体、第2石油類非水溶性液体
労働安全衛生法 施行令別表6の2・有機溶剤中毒予防規則第1条第1項第4号(第2種有機溶剤)
法第65条の2 作業環境評価基準(管理濃度 50 ppm)
施行令第18条名称等を表示すべき有害物
施行令別表 1-4危険物(引火性のもの)
法第57条の2、 通知対象物 政令番号第475号
化学物質管理促進法 対象外
毒物及び劇物取締法 対象外
船舶安全法 危規則第2,3条危険物告示別表第1(引火性液体類)
航空法 施行規則第194条危険物告示別表第1引火性液体
悪臭防止法 施行令第1条特定悪臭物質
海洋汚染防止法 分類されていない

16.その他

引用文献等

1. 国際化学物質安全性カード 化学工業日報社(1997)
2. 化学物質毒性ハンドブック第4巻、丸善(2000) ;Patty's industrial Hygiene and Toxicology, 4th Edition (1994).
3. NIOSH : Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (1999).
4. EPA : Health and Environmental Effects Profile for Isobutanol (1986)
5. H. Simizu et al., J. Ind. Health, 27, 400〜419(1985)
6. Hazardous Substances Data Base (1995).
7. IPCS Environ. Health. Criteria 65"Butanol-Four Isomers" (1987).
8. 化審法化学物質(改訂第5版)、化学工業日報社 (2002).