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整理番号:No.14
石 油 化 学 工 業 協 会
作成    1984年5月16日
改訂    2000年5月31日

1.製品名  キシレン


2. 組成、成分情報

化学名 キシレン
  (別名:キシロール、ジメチルベンゼン、ザイレン)
含有量 99%以上
化学式 C6 H4(CH32(分子量:106.17)
官報公示整理番号 化審法・安衛法 (3)−3
CAS No. o-キシレン  95−47−6
m-キシレン 108−38−3
p-キシレン  106−42−3
混合キシレン  1330−20−7

3. 危険・有害性の要約

分類の名称 引火性液体、急性毒性物質
有害性 呼吸器刺激、中枢神経抑制作用がある。
環境影響 生分解性良好ではあるが、大量の放出により魚・甲殻類への影響が認められる。
危険性 蒸気は空気より重く、低所に滞留し爆発性混合ガスをつくりやすい。

4. 応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などでおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うことが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の投薬をしたり、被災者に口からものを与えてはならない。直ちに医師の手当てを受ける。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服等を切断する。その後、水または微温湯を流しながらよく洗浄する。石けんを使ってよく洗い落とす。
外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は医師の手当てを受ける。
すぐには痛みがなくまた影響がなくとも障害が遅れて現れることがあるので必ず医師の診断を受ける。
少量でも、危険な量が血液中に入り込むことがあるので、全身状態に良く注意すること。
目に入った場合 コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗浄する。最低15分間洗浄した後、直ちに眼科医の手当てを受ける。洗眼の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
飲み込んだ場合 吐かせようとしてはならない。
揮発性液体なので、吐き出させるとかえって危険性が増す。
水でよく口の中を洗わせる。口から何も与えてはならない。
嘔吐が自然に起こったときは、気管への吸入が起きないように身体を傾斜させる。保温して速やかに医師の手当てを受ける。

5. 火災時の措置

消火剤

粉末、泡(耐アルコール泡)、二酸化炭素

消火方法

火災発生場所の周辺に関係者以外の立入を禁止する。
初期の消火には粉末、二酸化炭素などを用いる。
大規模火災の際には、泡(耐アルコール泡)消火剤などを用いて空気を遮断することが有効である。
棒状水の使用は火災を拡大し危険な場合がある。
周辺火災の場合、周囲の設備などに散水して冷却する。移動可能な容器は速やかに安全な場所に移す。

消火を行う者の保護

消火作業の際には自給式呼吸器等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 1.漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
2.作業の際は保護具を着用し飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように
 注意し、風上から作業する。
3.風下の人を退避させる。
環境に対する注意事項 1.付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
除去方法 1.危険なくできるときは漏洩部を止める。
2.漏出した場所の周辺から人を退避させると共に火災爆発の危険性を警告する。
3.少量の場合
 乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
4.大量の場合
 盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
 この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。 

7. 取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業する。
2.作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.取扱後、手荒い洗顔等を十分に行い、又衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、蒸気を発散させない。
6.引火しやすいため、火気、火花、アークを発生するものまたは高温点火源を付近で使用しない。
7.取扱場所で使用する電気機器は防爆構造とし、機器類は静電気対策を講じる。
容器取扱い) 8.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
9.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、または引きずる等の乱暴な取り扱いをしない。
10.流動によって静電気が発生する場合があるので出し入れの容器にはアースを取る。
保管 1.容器は直射日光を避け、通風の良い、冷暗所に保管する。
2.保管場所は火気厳禁とする。
3.酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。

8. 暴露防止措置

管理濃度 100 ppm(混合キシレンとして)
許容濃度 日本産業衛生学会 (1995)   :100 ppm,430 mg/m3
ACGIH
 (TLV-TWA) (1999):100 ppm,434 mg/m3
 (TLV-STEL)(1999):150 ppm,651 mg/m3
 A4(発がん性物質として分類できない物質)
設備対策 室内での取扱の場合は発生源の密閉化又は局所排気装置を設置する。
取扱場所の近くに安全シャワー、手洗い、洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示しておく。
保護具 呼吸器の保護具:有機溶剤用防毒バスク、送気マスク、空気呼吸器
手の保護具   :耐溶剤性保護手袋
目の保護具   :ゴーグル、面体(顔面シールド)、保護眼鏡

9. 物理的及び化学的性質

  o−キシレン m−キシレン p−キシレン
外観 無 色 透 明 液 体
臭気 芳    香    臭
沸点(℃) 144.41 139.10 138.35
融点(℃) -25.18 -47.89 13.26
引火点(℃) 17.0 25.0 25.0
発火点(℃) 463 527 528
爆発限界(vol%) 1.0〜7.0 1.1〜7.0 1.1〜7.0
 蒸 気 圧
Pa (mmHg)(20℃)
639 (4.8) 826 (6.2) 879 (6.5)
蒸気密度   3.66 (空気=1)  
比重(20℃) 0.8801 0.8642 0.8611
溶 解 度 水に不溶、アルコール、エーテルとは自由に混合
分配係数 3.1212)
2.713)
 
3.20
13)
-
3.1
13)



10. 安定性及び反応性

 強い酸化剤(硝酸など)と激しく反応する。


11. 有害性情報

 1.ヒトへの影響 1)2)3)

  (1)急性毒性(ヒト)

  1)吸 入
・塗料作業者がキシレンを主成分とする蒸気(推定キシレン濃度10,000 ppm)を吸入し、3人のうち1人が死亡した。但し、キシレンが原因であるとは特定されていない。生存した2人には、神経障害があったが回復した。
・最高100 ppm以上の暴露と推定される労働者の206名の調査によると
 神経衰弱様の症状及び自律神経障害   18%
 血管神経障害                  14%
であり、勤続5年以下の群に比して、5年以上の群では2〜4倍の高率であった。2)
・その他労働者曝露により、吐き気、集中力の欠如、短期記憶の混乱、平衡感覚の喪失等の症状が報告されているが、いずれも、キシレンが原因であるとは特定されていない。
・ボランティアの実験等により次の報告がある。
混合キシレン  200 ppm  3〜5分で鼻、喉に刺激あり
p−キシレン  100 ppm   1〜7.5h/日×5日 女性 頭痛、目まいあり
m−キシレン TWA200 ppm 3.67h/日×4日 肺、心拍、血圧等に影響なし
  2)経 口
・大量のキシレン(量不明)を飲み、呼吸不能により死亡した。
  3)経 皮
・労働者曝露が数多く報告されているが、吸入の影響、共存他物質の影響が不明であり、経皮の影響は特定されていない。
・皮膚刺激、皮膚乾燥等の報告がある。
     ・人の末梢血リンパ球培養液にキシレン1.52 mg/mlを加えた実験で、染色体異常の増加、姉妹染色分体交換率の増加は認められなかった。4)
     
 2.動物への影響(1)急性毒性 1)
  1)急性毒性値
経路 動物  
混合キシレン o−キシレン m−キシレン p−キシレン
吸入 ラット LC50 6,700 ppm
×4hr1)
     
ラット LCLo   6,125 ppm
×12hr1)
8,000 ppm
×4hr2)
4,912 ppm
×24hr1)
マウス LC50 3,523(male) 4,595 ppm
×6hr
5,267 ppm
×6hr
3,907 ppm
×6hr
経口 ラット LC50 8,640 mg/kg 4,400 mg/kg
(10/17)
6,661 mg/kg2) 5,000 mg/kg2)
ラット LCLo   5,000 mg/kg2)    
皮下 ラット LCLo   2,500 mg/kg2) 5,000 mg/kg2) 5,000 mg/kg2)
腹腔 ラット LDLo 2,000 mg/kg2) 1,500 mg/kg2) 2,000 mg/kg2) 2,000 mg/kg2)

  2)暴露濃度と症状 1)

  1. 1,500 ppm〜2,000 ppm×4hr ラット  血清酵素活性上昇
  2. 2,800 ppm×2hr〜3.5hr   ラット  疲癒、運動失調
  3. 6,300 ppm〜6,700 ppm×4hr ラット、マウス 中枢神経抑

(2)慢性毒性
1)濃度・暴露日数と症状4)

濃度(ppm) 暴露条件 動  物 症     状
77 24 hr/日×127日 ラット、イヌ、モルモット、サル 血液像に異常認めず
300 6 hr/日× 14日 ラット 肝・腎のモノオキシナーゼ活性上昇
300 6 hr/日×126日 ラット 毛づくろい行動の低下、運動量増加
690 8 hr/日×130日 ウサギ 糸球体腎炎
770 8 hr/日× 30日 ラット、イヌ、モルモット、サル 血液像に異常認めず
1150 8 hr/日× 50日   ウサギ 血液像に変化、腎障害あり

(3)変異原性

サルモネラ菌を用いたエームステストにおいて、o、m、pーキシレンはいずれも変異原性は認められなかった。3)

(4)発がん性

文献なし

(5)催奇形性

1)CFY妊娠ラットの吸入試験(230 ppm)で胎仔の発育遅延が認められ、多少の骨格異常の増加は認められたが、催奇形性は見られなかった。2)
2)CD−1妊娠マウスに工業用混合キシレンを経口投与した実験で致死量に近い2.4及び3.0 ml/kg・dの投与群で三ツ口、肋骨異常等の催奇形性が見られた。6)

12. 環境影響情報

生分解性:化審法の既存化学物質安全性点検では良分解性の結果が得られている。7)

生態影響

項目 生 物 名
混合キシレン o−キシレン m−キシレン p−キシレン
TLm48 コイ 56 ppm 8)      
TLm24 Gold fish   13 mg/ 9) 16 mg/ 9) 18 mg/ 9)
TLm96 Zoea(Cancer Magester Dana) 6 mg/ 10) 12 mg/ 10)  
TLm24 Zoea(Cancer Magester Dana) 38 mg/ 10) 33 mg/ 10)  
TLm 3 ミジンコ 32 ppm      

13. 廃棄上の注意

    廃棄は焼却によって行い、その方法は次のいずれかによる。

  1. おがくず、ウエス等に吸収させ燃焼炉で焼却する。
  2. 焼却炉の火室へ噴霧し、焼却する。
  3. 燃えにくい場合は助燃材とともに燃焼させる。
  4. 多量の場合は、免許を所有している専門業者に処理を委託する
  5. 空容器を廃棄するときは、内容物を完全に除去した後に処分する。

14. 輸送上の注意

  国連分類:クラス3(引火性液体 P.G2)
  国連番号:1307

  1. 車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人に運送注意書、(イエローカード)を渡す。
  2. 容器の破損、漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないように積み込み、荷崩れ防止を確実に行う。
  3. タンク車(ローリー)等への充填、積み卸し時は、平地に停止させ、車止めを接地し、タンク車の許容圧力以下の圧縮ガスまたはポンプを用いて行う。
  4. ホースの脱着時はホース内の残留物の処理を完全に行う。
  5. ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15. 適用法令

労働基準法 施行規則別表第1の2、第4号1の労働大臣が指定する物質
労働安全衛生法 法第57条 名称等を表示すべき有害物
有機則 第2種有機溶剤
    施行令別表第1 危険物(引火性のもの)
    施行令別表第9 通知対象物(MSDS関連)
消防法 危険物第4類第2石油類(非水溶性)(指定数量 1,000L)
毒物及び劇物取締法 劇物
船舶安全法
 
危規則 別表第5
引火点が23℃未満のもの  中引火点引火性液体 →o   o−体
  引火点が23℃以上のもの 高引火点引火性液体 →m,p m、p−体
高圧ガス保安法 一般則(可燃性ガス、毒性ガス)
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律:C類物質(タンカーによるばら積み運送)
化学物質管理促進法 : 第一種指定化学物質

その他
引用文献:

  1. NIOSH:1979 Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (1980)
  2. R. Toftgard et al.:Scand. J. Work Environ. & Health. 6, 1-18 (1980)
  3. 後藤稠也編:産業中毒便覧、医歯薬出版(株) 545-546 (1977)1)U.S. Department of Health & Human Service:Toxirological Protile for XYLENES(1994)
  4. U.S.Department of Health & Human Service: Toxirological Profile for XYLENES(1994)
  5. 池田正之:作業環境.4(2),33-37(1983)
  6. A. Hudak et al.:Toxicology. 11, 55-63 (1987)
  7. 通産省公報、昭和50年8月27日
  8. T. A. Marks et al.:J. Toxicol. Environ. Health. 9, 97-105 (1982)
  9. 西内康浩:生態化学 4, (3).45-47 (1981)
  10. R. S. Callwell et al.:Fte Eff. Pet, H. C. War. Ecosyst. Org. Proc. Symp.
  11. 既存化学物質安全性(ハザード)評価シート
  12. EPA: Health Effects Assessment for Ethylen Glycol (1987)210-220 (1977)
  13. JETOC 情報B. 3, (8),12 (1981)