HOME > 製品安全データシート > アクリロニトリル

                    石 油 化 学 工 業 協 会  
整理番号:No.06          作成   1983年5月25日
改訂   2000年5月31日

1.製品の名称  アクリロニトリル


2.組成、成分情報

化学名 アクリロニトリル
(別名:シアン化ビニル、プロペンニトリル、シアノエチレン)
化学式 CH2=CHCN (分子量 53.06)
含有量 99%以上
官報公示整理番号 化審法・安衛法 (2)−1513
CAS No. 107−13−1

3.危険・有害性の要約

分類の名称 引火性液体、急性毒性物質、その他の有害物質
有害性 催涙性があり、皮膚や目を刺激する。蒸気吸入、皮膚吸入により神経系、呼吸器系、
消化器系の障害を引き起こすことがある。
発がん性については IARC でグル−プ2B(ヒトに対して発がん性を示す可能性がある。)に分類されている。
環境影響 性生物に有害
危険性 引火性の強い液体(引火点 −6℃)
蒸気は空気と混合して爆発性のガスとなる。
蒸気は空気より重く低所に滞留しやすい。また地面や床に沿って移動することがあり、遠距離引火の可能性がある。
光、アルカリなどにより重合し、発熱する。
加熱すると分解し、窒素酸化物、シアン化水素などの有害フュ−ムを生じる。

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所へ移動させる。体を毛布などで覆い、保温して安静を保つ。呼吸が止まっている場合、又は呼吸が弱い場合は、衣服を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。意識はないが呼吸している場合、又は意識はあるが呼吸困難な場合は、酸素吸入が有効である。医師の指導の下で行うことが望ましい。緊急やむを得ないとき(意識のないとき)は、医師の指導の下で亜硝酸アミル嗅がす。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。必要であれば衣服、靴は切断する。外観に変化が見られたり、痛みが続く場合は直ちに医師の手当を受ける。すぐに痛みがなく、また影響がなくとも障害が遅れて現れることがあるので、必ず医師の診断を受ける。
目に入った場合 コンタクトレンズ使用の場合は、固着していない限り、取り除いて洗浄する。最低15分間洗浄した後、直ちに眼科医の手当を受ける。洗顔の際、まぶたを指でよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るよう洗浄する。
飲み込んだ場合 青酸発生による中毒症状があるといわれているので、それを念頭に置く。意識がある場合は、微温湯を与えるなどして完全に吐かせ、次に1%チオ硫酸ナトリウム溶液にて充分にうがいをさせ、速やかに医師の手当を受ける。呼吸が止まっている場合、又は呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で、人工呼吸を行う。

5.火災時の措置

消火剤 泡(耐アルコール)、粉末、二酸化炭素が有効である。
消火方法 周辺火災の場合、速やかに容器を安全な場所に移す。また移動不可能な場合には、容器及び周囲に散水し冷却する。
火元への燃料源を断ち、消火剤を使用して消火する。
火災発生場所の周辺に、関係者以外の立ち入りを禁止する。消火作業は風上から行い、タンクなどの場合には、泡、粉末、二酸化炭素、水蒸気などを中に吹き込むと共に、外側を冷却する。
消火を行う者の保護 消火作業の際には、自給式呼吸器等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 1.漏出した場所の周辺に、ロープを張るなどして関係者以外の立ち入りを禁止する。
2.作業の際は保護具を着用し飛沫が皮膚に付着したり、ガスを吸入しないように
 注意し、風上から作業する。
3.風下の人を退避させる。
環境に対する注意事項 1.付近の着火源となるものを速やかに取り除く。
除去方法 1.危険なくできるときは漏洩部を止める。
2.漏出した場所の周辺から人を退避させると共に火災爆発の危険性を警告する。
3.少量の場合
 乾燥砂、土、おがくず、ウエス等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
4.大量の場合
 盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
 この際、下水、側溝等に入り込まないように注意する。 

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.吸入を防ぎ、目、粘膜、皮膚との接触を避ける。必要に応じ適切な保護具を着用し、風上から作業をする。
2.蒸気の発散を出来るだけ抑え、作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.室内で取扱う場合は、蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排気装置を設ける。
4.取扱い後、手洗い洗顔等を充分に行い、衣服に付着した場合は着替える。
5.漏れ、あふれ、飛散を防ぎ、みだりに蒸気を発散させない。
6.移送に際しては、空気圧を用いてはならない。
7.引火しやすいため、火気、火花、ア−クを発するもの、又は高温点火源を付近で使用しない。
8.光、酸素、アルカリ等により重合し、その際発熱を伴うので十分注意する。
(容器取扱い 9.容器は破損、腐食、割れ等のないものを使用する。
10.容器はみだりに転倒させ、衝撃を加え、又は引きずる等の乱暴な取り扱いをしない。
11.流動によって静電気が発生する場合があるので、出し入れの容器にはア−スを取る。
12.使用済みの容器は、一定の場所を定めて保管する。
保管 1.直射日光を避け、栓を上に向けて置き、貯蔵所は全体換気を行うようにする。
2.出来るだけ直接空気に触れることを避け、不活性ガスを封入して貯蔵するのがよい。
3.多量に保管されている場所での作業に従事する場合は、監視人を置くことが望ましい。
4.貯蔵、輸送にはハイドロキノン等の安定剤を添加する。
混触禁止物質等 1.強酸化剤、強塩基との接触禁止。

8.暴露防止及び保護措置

管理濃度 2 ppm
許容濃度 日本産業衛生学会勧告値 (1999) 2 ppm、 皮膚吸収あり  発がん物質 第2群A
ACGIH (1999) 勧告値 TLV-TWA ; 2 ppm、  皮膚吸収あり  発がん性分類 A2
設備対策 室内での取り扱いの場合、発生源の密閉化又は局所排気装置を設置する。局所排気装置からの排ガスには、除外設備を設けるのが望ましい。
取り扱い場所の近くに安全シャワ−、手洗い、洗顔設備を設け、その位置を明瞭に表示する。
保護具
  
呼吸器系保護具     :送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器、有機ガス用防毒マス
手の保護具        :
保護手袋ゴム
目の保護具        :保護眼鏡
皮膚及び身体の保護具 :保護長靴(ゴム)保護衣、保護前掛け

9.物理的及び化学的性質

外観 無色透明液体
臭気 苦扁桃に似たかすかな刺激臭
沸点 77.3 ℃/101.3 kPa ( 760 mmHg )
融点 -83.55
引火点 -6 ℃ (タグ密閉式、石化協・危険物等デ−タベ−ス登録値)
発火点 480
爆発特性 下限 ; 3 vol%、 上限 ; 17 vol%
(1) 極めて容易に引火する液体である。
(2) 光、アルカリ等により重合し、発熱する。
蒸気圧 8.0 kPa ( 60 mmHg )/11.8 ℃、 18.3 kPa ( 137 mmHg )/30 ℃
蒸気密度 1.83 (空気=1)
比重 0.8060 ( 20 ℃ )  ℃
溶媒に対する溶解性 水 ; 7.3 % ( 20 ℃ )
エタノ−ル、エ−テル等ほとんどの有機溶媒と自由に混和する。
分配係数 log Pow = -0.92 (実測値)

10.安定性及び反応性

活性な二重結合を有するので、濃厚溶液は特に光照射下で徐々に重合して着色する。安定剤が必要。
加熱すると激しく燃焼または爆発することがある。
加熱すると分解し、窒素酸化物、シアン化水素などの有毒なフュ−ムを生じる。  15)
強酸化剤、強塩基と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。  15)

11.有害性情報

  1.ヒトへの健康影響

   (1)刺激性  液体アクリロニトリルに長く接触すると、数時間の潜伏期間を経た後、皮膚に水泡ができる。
影響を受けた皮膚は、2度の火傷に似た症状を示す。  1)
液体は皮膚に刺激作用を示し、アレルギ−性皮膚炎を生じることもある。さらに接触部位から経皮的に吸収されて、全身中毒症状を招くおそれもある。  16)
(2)急性毒性 蒸気を吸収すると頭痛、めまい、嘔吐、ふるえ等の症状が見られる例がある。  1) 2)
経口または吸入のいずれの曝露経路によっても吸収され、高濃度ではシアン中毒に類似した強い急性毒性を示す。  16)
(3)発がん性 IARC では発がん性について、2B(ヒトに対して発がん性を示す可能性がある。)に分類されている。
ヒトでは曝露と発がんとの関連性を示す十分な疫学的証拠はないが、変異原性を持ち、ラットでは中枢神経系、乳腺、Zymbal 腺などに腫瘍を誘発するため、ヒトでも発がん性を示す可能性があると考えられている。  16)
繊維工場での疫学調査の概要  1)
米国でのアクリロニトリル長期取り扱い作業者を対象にした、がん発生疫学研究がなされた。期待値よりも高い肺がんおよび前立腺がん発生率の増加が報告されているが、因果関係に関する結論は確定していない。


  2.動物への影響

    急性毒性  3)

  経口 ラット LD50 82 mg/kg
経口 マウス LD50 35 mg/kg
経口 ウサギ LD50 93 mg/kg
腹腔 マウス LDL0 15 mg/kg
経皮 ウサギ LDL0 280 mg/kg
経皮 モルモット LDL0 250 mg/kg
吸入 ラット LCL0 500 ppm×4hr
吸入 マウス LCL0 784 ppm×4hr
吸入 ネコ LCL0 600 ppm×4hr
吸入 ウサギ LCL0 258 ppm×4hr
吸入 モルモット LCL0 576 ppm×4hr


    腐食性・刺激性  4)

蒸気は目、鼻に対して刺激性を有する。(モルモット)


    慢性毒性

経口投与:
動物・濃度・期間 結果

ラット/CFW、 0.5, 5, 50 ppm
飲料水投与、2年間  
5)
50 ppm 投与群で飲料水の摂取量が減少しただけで、他には異常は見られなかった。

ラット/、 4, 10, 25, 60 mg/kg/day
飲料水投与、90日間  13)
無作用レベルは 8〜10 mg/kg/day であった。
成長阻害、血液学的検査値の変化、肝、腎重量増加等が見られた。

犬(ビーグル), 100, 200, 300 ppm
飲料水投与、6ヶ月  13)
無作用レベルは 100 ppm であった。 200 ppm、300 ppm で投与量に比例して、血液学的検査値及び肝機能の変化が見られた。

吸  入:
動物・濃度・期間 結果

ラット/Wistar 115 ppm,
3 hr/day,6 day/week,6 months  5)
粘膜刺激症状が見られた。

ウサギ/Polish 115 ppm,
3 hr/day,6 day/week,6 months   5)
血液学的検査値、大脳皮質神経、肺、腎等の組織に変化が見られた。

    がん原性  1)

    20、80 ppm、6時間/日X5日/週、ラットで吸入試験を行った結果、80 ppm で1年後、Zymbal 腺腫が見つかった。1年以上の投与で、雌に 20 ppm で腫瘍が見つかった。
100、300 ppm ( 4、9、22 mg/kg/day 相当) 給水中にまぜてラットに1年間投与した。
全ての投与レベルで、雌雄に前胃の扁平上皮がん、中枢神経の神経膠腫、Zymbal 腺腫が見られた。


    変異原性  5)6)

    サルモネラ菌等による試験では、陰性を示す場合と陽性を示す場合とがあり、必ずしも一致しない。
ラットの骨髄細胞の染色体異常は、吸入では陰性、腹腔内投与では陽性である。


    催奇形性

    80 ppm の吸入によるラットの全奇形発現率の増加は、統計的に有意でなかった。
ラットを用いた経口投与試験では、母獣に明らかな毒性があった 65 mg/kg/day では奇形発生率の増加がみられたが、10 mg/kg/day では母獣及び胎児への影響は何ら見られなかった。

12.環境影響情報

生分解性 化審法の既存化学物質の安全性点検結果では、生分解性良好と判断されている。BOD 測定で 41〜74 % の分解である。( 30 ppm アクリロニトリル、100 ppm 汚泥、2週間)
数種類の細菌によりアクリルアミドに分解される。  11)
アクリルアミドは環境中の微生物により、容易に分解される。  12)
生態影響
       魚毒性 :
   TLm24時間  Pinfish  9)
Minnows (うぐいの類) 10)
Bluegill sunfish
24.5 ppm(海水中) 
37.4 ppm 
25.0 ppm(軟水中)
   TLm48時間  Minnows (うぐいの類) 10) 24.0 ppm 
   TLm96時間   Fathead minnows (うぐいの類) 9)
Fathead minnows (うぐいの類) 9)
Bluegill (くろますの類) 9)
Guppies (にじめだかの類) 9) 
18.1 ppm(軟水中) 
14.3 ppm(硬水中) 
11.8 ppm(硬水中)
33.5 ppm(硬水中) 
水圏環境生物に対しては、OECD 分類基準(案)では甲殻類、魚類において harmful
〜toxic に分類される。  16)
       ミジンコに対する毒性:
        14)
 
24 hours  LC50  13 mg/l
48 hours  LC50  7.6 mg/
l
      海草に対する毒性:
        14)
10 μg/l 〜10 g/l の濃度でアクリロニトリルの cultured seagrass に対する毒性を試験したが、100 mg/l を超す濃度で光合成や呼吸の抑制が見られた。

13.廃棄上の注意

  1. 廃棄は燃焼法が一般的であるが、高温加圧下で分解するアルカリ法と活性汚泥法とがある。
  2. 空容器を廃棄するときは、水蒸気吹き込み等で内容物を完全に洗浄した後に処分する。

14.輸送上の注意

  国連分類 : クラス3 (引火性液体 P.G1) 
  国連番号 : 1093
  

  1. 車両等によって運搬する場合には、荷送人は運送人へ運送注意書、イエロ−カ−ドを携帯させる。
  2. 容器の破損、漏れがないことを確かめ、衝撃、転倒、落下、破損のないよう積み込み、荷崩れ防止を確実に行う。
  3. タンク車(ロ−リ−)等への充填、積み卸し時は平地に停止させ、車止めをし、接地し、タンク車の許容圧以下の圧縮ガス又はポンプを用いて行う。
  4. ホ−スの脱着時は、ホ−ス内の残留物の処理を完全に行う。
  5. ロ−リ−、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

労働基準法 施行規則別表第1の2、第4号1の労働大臣が指定する物質
労働安全衛生法 施行令別表第1第4号 危険物(引火性のもの)
特化則 特定第2類物質
施行令別表第9、通知対象物(MSDS関連)
消防法 危険物第4類第1石油類(非水溶性液体 指定 200 リットル)
高圧ガス保安法 一般則第2条 可燃性ガス、毒性ガス
毒物及び劇物取締法 劇物
海洋汚染及び海上災害の
防止に関する法律
有害液体物質B
船舶安全法 危規則別表第5 中引火点引火性液体
航空法 引火性液体
化学物質管理促進法 第一種指定化学物質

16.その他の情報

  文献:

  1. ACGIH Documentation of the Threshold Limit Values (1991)
  2. Environmental Health Criteria 28,WHO (1983)
  3. 化学物質要覧 (1979年環境庁資料)
  4. ATSDR Toxicological Profile for Acrylonitrile (1990)
  5. アクリロニトリルの量反応関係に関する文献調査 (1979) 橋本和夫
  6. 厚生省がん研究助成金による研究報告書(下) (1975〜79)
  7. Teratol.Evalu.Inhal.AN Monomer in Rats,Dow Chem.1978.5.31
  8. Teratol.Evalu.AN Monomer Given to Rats by Gavage,Dow Chem.1978.11.3
  9. 魚類と水生生物に及ぼす化学品の毒性デ−タ インダストリアルデ−タセンタ− (1973)
  10. Handbook of Environ. Data on Orga. Chem.,P78,Van Nostrand Co (1977)
  11. 日本発酵工学会講演要旨集,P218 (1981)
  12. Water Research 14,775 (1980)
  13. Fed.Regist. Vol42,No.48,March 11,1976
  14. Health Assessment Document for acrylonitrile, EPA,1983
  15. ICSC CARD, http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj/icss0092.html
  16. 既存化学物質安全性(ハザ−ド)評価シ−ト,http:www.citi.or.jp/sheet/96-03/96-03.htm