HOME > 製品安全データシート > エチレン
                    石 油 化 学 工 業 協 会  
整理番号:No.2          作成   1982年5月
改訂   2003年4月

1.製品の名称  エチレン


2.組成、成分情報

化学名 エチレン
別名 エテン
含有量 99mol%以上
化学式及び構造式 、 CHCH(28.05) 
官報公示整理番号 化審法・安衛法(2)−12
CAS No. 74−85−1

3.危険有害性の要約

最重要危険有害性
危険性 空気中での爆発限界が低く、又、引火点も極めて低いので爆発火災に対する危険性が大きい。
高温,高圧下では分解爆発を起こす。
移送時の流動や、噴霧,漏れなどの際に静電気を発生しやすく、わずかな放電火花で爆発する危険性がある。
有害性 特に問題となる毒性は報告されていない。
高濃度では窒息作用を示す。
麻酔性がある。
液体に触れると凍傷を起こす。
IARCの発がん性物質区分でグル−プ 3 (ヒトに対して発がん性について分類できない) に分類されている。
分類の名称 高圧ガス,可燃性ガス

4.応急措置

吸入した場合 被災者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させる。
身体を毛布などでおおい、保温して安静を保つ。
呼吸が止まっている場合及び呼吸が弱い場合は、衣類を緩め呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識があるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。
医師の指導の下に行うことが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり意識のない被災者に口から物を与えてはならない。
塔槽内で作業者が中毒した場合は、発見者は直ちに他に連絡すると共に送気マスク又は空気呼吸器を着用し患者を運び出す。
目に入った場合 多量の流水で洗眼し、直ちに医師の手当を受ける。
皮膚に付着した場合 直ちに汚染された衣服や靴を脱ぎ、多量の水で充分に洗う。
凍傷の場合には、できるだけ早く接触部を温湯で充分暖めると共に医師の手当を受ける。

5.火災時の措置

消火剤 ドライケミカル,炭酸ガス,水噴霧(冷却)
消火方法 直ちに燃焼源となるガス流出を止め、消火剤を使って消火する。
ガス漏れを停止できない場合は、引火による爆発危険防止のため燃焼を継続する等適切な措置をとる。
又、延焼の恐れのないよう水スプレーで被災物の冷却をする。
消火作業は風上から行い、場合によっては呼吸保護具を着用する。
周辺火災の場合 速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能な場合は水噴霧により容器,周囲を冷却する。
消火を行う者の保護:空気呼吸器,防火服、防災面等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

二次災害防止措置 漏出源を遮断し、漏れを止める。
付近の着火源となりそうなものを速やかに取り除く。
風下の人を退避させ、漏出場所周辺は立入禁止とすると共に火災爆発の危険性を警告する
人に対する注意事項 適切な保護具(送気マスク又は空気呼吸器,ゴ−グル型保護眼鏡又は防災面,耐薬品性手袋等)を着用し、風上から作業を行う。
環境に対する注意事項 れた液には、土,砂をかける等、周辺への流出を防ぎ、換気を充分にして蒸発,拡散させる。又は散水し蒸発を促しても良い。
この際、液体が下水,側溝,低所に入り込まないように注意する。

7.取扱い及び保管上の注意

「高圧ガス保安法」等の定める所に従って作業をする。
取扱い 取扱場所周辺は火気厳禁とする。
火花を発生しない道具を使用する。
適切な保護具を着用し、眼,皮膚に触れない様にする。又、ガスの吸入を避ける。
空気と混合して爆発性ガスとなり易いので、ガス漏れには厳重に注意するとともに、火花,火気,ア−クを発するもの,高温物体,強酸化剤との接近を避ける。
静電気防止のための装置,機器の接地を確実に行う。
又、作業衣,作業靴は導電性の良いものを着用する。
電気機器類は防爆型のものを使用する。
屋内作業場で使用する場合、換気には充分注意を払い、ガス濃度はできるだけ低くしておく。
タンク内又は密閉された部屋等に作業者が入る時には強制換気を行い、ガス濃度を充分低く保つと同時に、酸素濃度(常圧では18 % 以上) を確保する。
又は送気マスクを着用して作業する。作業を開始する前にはガス検知器で濃度をチェックする。
保管 容器は常時40℃ 以下の風通しの良い不燃構造のところに保管し警戒標識を掲示する。
貯蔵所は付近の民家などに対し「高圧ガス保安法」に定められた距離をとる。
(置場面積が 8m2 未満で壁を障壁とした場合を除く。)
定期的にガス検知を行い、ガス漏れを発見した時は不良容器を搬出し処置をとる。
貯槽に関する電気,計装設備は防爆構造のものを使用する。
内容量の 90 % を超えて貯蔵しない。
貯槽は付近の民家などに対し、「高圧ガス保安法」に定められた距離をとり帯状に直径の 1/10 以上の巾で赤色に塗るかまたは赤字で「液化エチレン」「火気厳禁」等の表示をする。
貯槽の配管には緊急遮断装置を設ける。
保管場所周辺は火気厳禁とする。
静電気対策を行う。
強酸化剤の近くには保管しない。

8.暴露防止措置及び保護措置

管理濃度 設定されていない。
許容濃度 日本産業衛生学会 ('02年度版) : 設定されていない。
ACGIH ('02年度版) : 単純性窒息ガスに分類されている。 (許容濃度は勧告されていない。)
設備対策 容器は「高圧ガス保安法」に基づく検査に合格したものを使用する。
一定年月を経た容器は「高圧ガス保安法」に基づく検査に合格したものを使用する。
使用する機器,装置は全て接地し、帯電を防ぐ。火花の発生しない道具を使用する。
使用する電気,計装機器は防爆構造のものを使用する。
作業場はガスが洩れた場合、滞留しない様な構造とする。
取扱い場所の近くに緊急用洗眼器及び安全シャワ−を設置し、その位置を、明瞭に表示する。
保護具
呼吸器 送気マスク又は空気呼吸器
ゴ−グル型安全眼鏡又は防災面
耐薬品性手袋又は皮手袋
その他 状況に応じて耐薬品性長靴,前掛を着用する。

9.物理的及び反応性

外観等 特殊な甘いにおいのある無色の気体又は液体
沸点 -104℃(101.3kPa) 
融点 -169.2℃ 
比重 気体 0.98(空気=1),液体0.57(沸点)
蒸気圧 8100kPa(15℃)
溶解度 水 (不溶)    
エタノール  2  V/V( 25℃) 
エーテル   20 V/V(15.5℃) 
臨界温度 9.9℃
臨界圧力 5.1MPa(50.5atm)
比熱 気体(定圧、25℃、100kPa(0.987atm)) 1.55J/g℃(0.37cal/g℃)
液体(-166.5℃)                  2.47J/g℃(0.59cal/g℃)
引火点 -136℃
発火点 520℃
爆発限界 下限2.7vol.%  上限36.0vol.%

10.安定性及び反応性

可燃性 あり (引火性高圧ガス)
爆発性 空気中での爆発下限界が低く、又、引火点も極めて低いので爆発火災に対する危険が大きい。
高温・高圧下では分解爆発を起こす。
移送時の流動や、噴霧,漏れなどの際に静電気を発生しやすく、わずかな放電火花で爆発する危険性がある。
安定性・反応性 通常の取扱い及び保管条件では安定である。
塩化アルミニウム,オゾン,四塩化炭素,その他強酸化剤等と激しく反応する。
日光,紫外線,酸化水銀等の存在下で塩素と爆発的に反応する。
触媒の存在下,高圧又は低圧で重合してポリエチレンを生成する。

11.有害性情報 

特に問題となる毒性は報告されていない。高濃度では窒息作用を示す。
又、液化エチレンが多量に皮膚についた場合は凍傷を生ずる。
ヒト 高濃度暴露により麻酔作用や窒息作用を示す。
また、代謝に関する研究はあるが、暴露による毒性影響についての報告はない。5)
(1)急性毒性 吸入  哺乳動物(動物種不明) LC50=950,000ppm/5分(95%)1)
吸入  マウス  麻酔作用の現れる時間 3)
         800mg/l  (70%)  5分
         920mg/l  (80%)  3分

         1,050mg/l (90%)  1分
(2) 慢性毒性 吸入  ラット(F344) 濃度0、300、1,000、3,000ppm、各群120匹
     6時間/日、5日/週、24ヶ月 暴露による影響は認められなかった。4)5)
吸入  ラット(SD) 濃度0、300、1,000、3,000、10,000ppm、各群30匹
     6時間/日、5日/週、13ヶ月 暴露による影響は認められなかった。
5)
(3) 変異原性 大腸菌及び数種の枯草菌で変異原性は見られない。6)
サルモネラ菌(TA100)を用いたエームズ試験において陰性。5)
ラット(F344)、マウス(B6C3F1)に0、40、1000及び3000ppmのエチレンを6時間/日、5日/週で4週間吸入暴露した骨髄細胞の小核実験において陰性。
5)
(4) 発がん性 吸入  ラット(F344) 濃度 最高3,000ppm、6時間/日、5日/週、24ヶ月発がん性は認められず。4)5)
     IARCモノグラフによれば、グループ3[ヒトに対する発がん性について分類できない]に分類されている。
(5) 催奇形性 文献なし。
(6) 代謝 ヒトおよび実験動物で吸収、代謝、分布、排泄に関する研究がなされており、概略は以下の通り。5)
特定されていない内発的なエチレン発生源がヒトおよび実験動物に存在する。
定常状態での肺胞のエチレン保持はヒトおよび実験動物共、10%以下である。ヒトでのエチレンの生物学的半減期は0.65時間。
ラットの試験では、エチレンの代謝は1000ppm暴露時に最大になる。
同じくその代謝速度には上限があるため、代謝により体内に生じる可能性のある酸化エチレンの最大予測濃度は約0.34nmol/ml(15ng/g・bw)。
エチレンは体内でたんぱく質と結合する。


12.環境影響情報

分解性 文献なし。
蓄積性 文献なし。
魚毒性 水生生物 急性毒性 LC5096hr=100〜1,000ppm 6)
その他 植物への生理作用は極めて広く、気相中濃度0.01〜0.1ppmで影響が現れ、通常1〜5ppmで最大の効果を示す場合が多い。
生理作用としては、伸長、成長の促進又は阻害、開花の促進又は阻害、花色の退色、落葉の促進、果実の成熟促進、蛋白質・核酸の合成促進等が報告されている。7)

13.廃棄上の注意

  1. 容器内の残ガスはパイプで焼却炉の火室に送り焼却するか、風通しの良い場所で少量づつ燃焼させながら放出する。
  2. 残ガス処理中は消火器を用意し、見やすい場所に処理中であることを表示する。
  3. 空容器を廃棄する時は、内容物を除去した後に処分する。

14.輸送上の注意

国連分類 クラス 2.1 (高圧ガス、引火性)
国連番号 1038 (液化されているもの、深冷液化されているもの)
1962 (圧縮されているもの)
「高圧ガス保安法」等の定める所に従って運搬する。
運搬容器は所定の基準に従ったものを使用する。
ロ−リ−運搬時は、高圧ガス移動監視者が同乗し監視する。ロ−リ−への積み込み,積おろしのときは、配管,車体を接地し、車輌は車止めで固定する。
ロ−リ−,運搬船には所定の標識板,消火設備,災害防止用応急資材を備える。
充填容器を車輌等で運搬するときはたて積みとしロ−プで固定する。
容器はみだりに転倒させ,落下させ,衝撃を与え,又引きずるなど粗暴な取扱いをしない。
その他取扱い及び保管上の注意の項の記載による。

15.適用法令

高圧ガス保安法 第2条 高圧ガス (圧縮ガス,液化ガス)
第26条 危害予防規程
一般,液化則,容器則
労働安全衛生法 第20条 危険防止のための措置
第45条 化学設備の点検
第59条 安全衛生教育
施行令別表第1危険物 (可燃性のガス)
施行規則第261条 爆発火災の防止
船舶安全法 危規則第3条 危険物告示別表第1高圧ガス
航空法 施行規則第194条 危険物告示別表第1高圧ガス
港則法 施行規則第12条 危険物 (高圧ガス)

16.その他

引用文献

  1. NISOH:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances, KU 5340000 1997
  2. 後藤 稠 他編:産業中毒便覧 医歯薬出版 p510 1980
  3. 堀口 博  著:公害と毒・危険物 有機編 三共出版 p448 1973
  4. T. E. Hamm et al: Fundamental and Applied Toxicology 4 473〜478 1984
  5. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks of Chemicals to Humans. Vol.60,1994
  6. Patty's Industrial Hygiene and Taxicology, Vol.2B, 2nd Ed. 1981
  7. 太田 保夫 著:植物の一生とエチレン 東海大学出版会 1987