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整理番号:No.1
石 油 化 学 工 業 協 会
作成   1981年 4月
改訂   2002年11月

1.製品の名称  ベンゼン


2.組成、成分情報

化学名 ベンゼン
別名 ベンゾール
含有量 99%以上
化学式 66 (分子量78.11)
官報公示整理番号 化審法・安衛法(3)-1
CAS No. 71-43-2

3.危険有害性の要約

最重要危険有害性
  有害性 蒸気を吸入したとき中枢神経へ影響を与えることがある。
皮膚からも吸収され有害作用を及ぼすこともある。
長期間の接触では、造血組織、肝臓、免疫系への影響が起こり得る。
発がん性物質である。
  環境影響 生分解性は良好である。
  物理的及び化学的危険性 非常に揮発性が高く、かつ引火性の高い液体であり、空気との爆発性混合物を生成し易い。
分類の名称(分類基準は日本方式) 引火性液体、急性毒性物質、その他の有害性物質。

4.応急措置

吸入した場合 被害者を直ちに空気の新鮮な場所に移動させ保温して安静に努める。
呼吸停止の場合及び呼吸が弱い場合は、呼吸気道を確保した上で人工呼吸を行う。
意識はないが呼吸している場合、又は意識があるが呼吸困難な場合は酸素吸入が有効である。医師の指導の下に行うことが望ましい。
医師の指示なしに酸素以外の施薬をしたり、被害者に口からものを与えてはならない。 直ちに医師の手当てを受ける。
皮膚に付着した場合 汚染された衣服、靴などは速やかに脱ぎ捨てる。
その後、多量の水又は石けん水で充分に洗い流す。
眼に入った場合 少なくとも15分間水で洗眼した後、直ちに医師の手当てを受ける。
コンタクトレンズを使用している場合は固着していない限り、取り除いて洗眼する。
洗眼の際、まぶたをよく開いて、眼球、まぶたの隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。
飲み込んだ場合 無理に吐かせようとせず、直ちに医師の手当てを受ける。

5.火災時の措置

消火剤 エアフォーム、粉末、二酸化炭素
特定の消火方法 1.周辺火災の場合
・移動可能な容器速やかに安全な場所に移す。
・移動不可能な場合は容器や容器周辺の設備などに散水し冷却する。
2.着火した場合
・火災発生場所の周辺に関係者以外の立ち入りを禁止する。
・火元への燃料源を断ち、消火剤を使用して消火する。
消火を行う者の保護 ・消火作業には自給式呼吸器、防火服、防災面等の保護具を着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項 風下の人を退避させ、漏出場所の周辺から人を遠ざける。
この際、ロープを張るなどして関係者以外の立入りを禁止する。
適切な保護具(有機ガス用防毒マスク、ゴーグル型保護眼鏡、耐薬品性手袋等)を着用し、風上から作業を行う。
環境に対する注意事項 下水、河川、低所等に流れ込まないように注意する。
除去方法 少量の場合、土、砂等に吸収させ密閉できる容器に回収する。
大量の場合、盛り土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いてから回収する。
この際、液体が下水、河川、低所等に流れ込まないように注意する。
水上に流出した場合は、風下の船舶を退避させて漏出周辺から遠ざけ、適切な吸収剤を使用するか、或いは、スキミングにより回収する。
ゲル化剤により固化回収してもよい。
二次災害の防止策 付近の着火源となりそうなものを速やかに取り除く。

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い 1.取扱い中は、できるだけ皮膚に触れないようにし、必要に応じて適切な保護具を着用する。
2.取扱い中は、蒸気の発散を出来るだけ抑え、作業環境を許容濃度以下に保つ。
3.取扱い中は、できるだけ風上から作業し、暴露防止に充分注意する。
4.取扱い後は、手洗いを充分に行う。
5.取扱い場所では、火気、火花、アークを発する物又は高温点火源を使用しない。
6.強酸化剤との接触を避ける。
7.洩れ、溢れ、飛散しない様にし、みだりに蒸気を発生させない。
8.容器は使用中以外は密栓をしておく。
9.タンクに入れる場合は、静電気による爆発を予防するため、導電性ホースを用い、ホース及び容器を接地する。
10.容器は、破損、腐食、割れ等がない物を使用する。
11.容器は、みだりに転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずる等の粗暴な取扱いをしない。
保管
  適切な保管条件 1.直射日光を避け、通風の良い、冷暗所に保管する。
2.保管場所は火気厳禁とする。
3.酸化性物質、有機過酸化物と同一の場所で保管しない。
4.容器は一定の場所を定め保管する。使用済み容器についても一定の場所を定め集積する。
  安全な容器包装材料 消防法危険物等級2に対応する容器が適用される。

8.暴露防止及び保護措置

設備対策 1.取扱い場所で使用する機器類は全て接地する。
2.取扱い場所で、使用する電気機器は、防爆構造とし裸電灯等は使用しない。
3.密閉型装置にするか、又は局所排気装置を設置する。
4.取扱い場所の近くに緊急用洗眼器及び安全シャワーを設置し、その位置を、明瞭に表示する。
管理濃度 10ppm('95、労働省告示(第26号)の管理濃度)
許容濃度 日本産業衛生学会(2002年度版) 
過剰発がん生涯リスクレベル   評価値 
 10-3  1ppm
 10-4 0.1ppm
 
ACGIH(2002年版)
 TLV-TWA  0.5ppm(1.6mg/m3
 TVL-STEL  2.5ppm(8mg/m3)皮膚吸収あり
保護具
呼吸器の保護具 防毒マスク(有機ガス用)、濃度が高い場合は送気マスク又は空気呼吸器
手の保護具 耐薬品性(不浸透性)手袋
目の保護具 保護眼鏡又は防災面
皮膚及び身体の保護具 静電気防止対策を施した耐薬品性長靴、前掛け

9.物理的及び化学的性質

外観
  物理的状態 液体
  色 無色透明
臭い 芳香を有する臭い
pH 測定項目に該当しない。
物理的状態が変化する特定の温度
  沸点 80.1℃(1.013×102kPa)(760mmHg)
  融点 5.5℃
引火点 -11℃(密閉)
発火点 562.2℃
爆発特性
  爆発限界 下限:1.3vol%   上限:7.1vol%
蒸気圧 6.070kPa(45.53mmHg)/10℃、12.69kPa(95.18mmHg)/25℃、24.37kPa(182.8mmHg)/40℃
相対蒸気密度(空気=1) 2.73
比重 0.8765(20/4℃)
溶解性 水:1,000mg/l(25℃)/その他の溶媒:アルコール、エーテル、アセトンとは自由に混合する。
オクタノール/水分配係数 log Pow = 2.1317) 、2.1118)
屈折率 1.5011(nD20
表面張力 2.89×10-4N/cm(28.9dyne/cm(20℃))
蒸発潜熱 3.93×10J/g(93.9cal/g)
ヘンリー定数 5.57×10kPa・m/mol(5.5×10atm・m/mol)

10.安定性及び反応性

安定性 通常の取扱い及び保管条件は安定である。
反応性 強酸化剤、濃硫酸+濃硝酸、酸素、オゾン、溶融移行と激しく反応する。
避けるべき材料 一部のゴム、合成樹脂
危険有害な分解生成物 熱分解により有毒ガス(CO等)を発生する。

11.有害性情報

ヒトへの影響
  慢性・長期毒性 ベンゼンの高濃度作業によって再生不良性。
貧血に導く骨髄機能の低下が報告されている。
  発がん性 ベンゼンの疫学研究では、ベンゼン暴露と骨髄性白血病の因果関係を立証している。19)
1.IARCモノグラフによれば、グループ1「ヒトに発がん性あり」に分類されている。 9)
2.NTPのCarcinogensの年報によれば、「発がん性既知」に分類されている。 10)
3.ACGIHでは、A1「Confirmed Human Carcinogen」に分類されている。
4.日本産業衛生学会では、第1群「ヒトに対して発がん性がある」に分類されている。
動物への影響
  急性毒性
経口 ラット LD50 3,400 mg/kg 1)
経口 ラット(♂) LD50 5,600 mg/kg 1)
経口 マウス LD50 4,700 mg/kg 2)
経口 イヌ LDLo 2,000 mg/kg 3)
腹腔 ウサギ LD50 340 mg/kg 1)
腹腔 ラット(♂) LD50 2,940 mg/kg 1)
吸入 ラット(♀) LC50 13,700 ppm/4 hr 1)
局部効果(皮膚、目)20) ウサギにおいて、2滴投与で中程度の眼刺激性を有す。
ウサギにおいて、10-20回の連続適用により軽微な皮膚刺激性を有す。
感作性 報告なし
反復投与毒性 1.ラットの187日間反復投与において、1mg/kg/日では作用はなく、10mg/kg/日では軽い白血球減少症、100mg/kg/日では白血球減少症と赤血球減少症が見られた。 2)
2.ラットに400ppm(1.278mg/m3)の濃度で日に7時間、14週間暴露すると白血球減少症が現れた。 1)
3.ラットに0.6g/kgを日に4時間、4ヶ月間経皮的に接触させると、骨髄での形質球増加、赤血球造血機能の破壊が見られた。 2)
慢性・長期毒性 マウスに100または300ppm(320または958mg/m3)で生涯暴露すると貧血、白血球減少症、好中世白血球症が現れた。 1)
変異原性 4) IARC MONOGRAPHS SUPPLEMENT 6 における変異原性試験結果の評価はベンゼンは試験法により陽性及び陰性の結果を示している。主な試験結果は下記の通りである。
1.サルモネラ菌(Ames試験)に対しては変異原性を示さない。
2.マウスの骨髄細胞に染色体異常、小核異常、姉妹染色分体交換を誘発する。
3.ショウジョウバエにおいて体細胞変異試験、精原細胞染色体交差試験で弱い陽性を示す。
催奇形性 5) Oak Ridge National Laboratoryがまとめた「Toxicological profile for Benzene」によれば多くの動物におけるベンゼンの発育/母体毒性に関する報告があるが、それらの中で催奇形性を示す報告はないとしている。
代謝・排泄 1.ベンゼンは主として肝臓で酸化酵素群により代謝され、フェノールが主代謝物となる。フェノールの代謝が更に進むと、di、或いはtriヒドロキシベンゼン、更にはキノン類が生成する。フェノール等ヒドロキシベンゼンの一部はグルクロン酸結合体や硫酸エステルを生成し、尿中に排泄される。 6)
2.代謝生成物の細胞巨大分子との結合が毒性メカニズムに関連すると考えられている。 7)
3.開環構造の代謝物は少ないが、マウスの実験で、ベンゼンが血液毒素として知られるt,t-ムコンアルデヒドに変化することが確認されている。 8)

12.環境影響情報

残留性/分解性 化審法の既存化学物質の安全性点検では生分解性は良好であると報告されている。16)
BOD分解度 39〜41%(100ppm, 2weeks)
21)
生態蓄積性 log BCF=1.10 17)
生態毒性20)
魚毒性 ニジマス LC50(96hr)=5.3mg/l
グッピー LC50(96hr)=28.6mg/l
ファットヘッドミノー LC50(96hr)=12.6mg/l
藻類 セレナストラム EC50(72hr)=29mg/l (増殖阻害)
甲殻類 オオミジンコ EC50(24hr)=18mg/l (遊泳阻害)

13.廃棄上の注意

1.廃棄は焼却によって行い、その方法は以下による。
   @.ケイソウ土等に吸着させて開放型の焼却炉で焼却する。
   A.焼却炉の火室へ噴霧し焼却する。
2.空容器を廃棄するときは、内容物を除去した後に処分する。

14.輸送上の注意

国際規制
  IMDG(国際海上危険物規則)コード ハザードクラス3(Flammable liquid), Packing group U
  ICAO-TI(国際民間航空機関技術指針)/
  IATA-DGR(国際航空運送協会危険物規則)
ハザードクラス3(Flammable liquid), Packing group U
国連分類 3(Flammable liquid)
国連番号 1114
国内規制 下記の法令に従い、規定の積載方法、容器等によって輸送する。
消防法 危険物第4類第1石油類
高圧ガス保安法 可燃性ガス、毒性ガス
輸送の特定の安全対策及び条件 1.車両等によって運搬する場合は、荷送人は運送人に運送注意書(イエローカード)を渡す。
2.取扱い及び保管上の注意の項の記載による他、引火性の強い、有害性液体に関する一般的な注意による。
3.タンク車(ローリー)等への重填、積み下ろし等は、車体を停止し、車体止めを施す。
4.ホースを用いて注入作業を行う時は、ホースの結合部を確実に締付け、又は結合したことを確認した後に行う。
5.ホースの脱着時は、ホース内の残留ベンゼンの処理を安全に行う。
6.ローリー、運搬船には所定の標識板、消火設備、災害防止用応急資材を備える。

15.適用法令

化学物質管理促進法 第1種指定化学物質 政令番号第299号
労働安全衛生法
 施行令別表第1 危険物(引火性のもの)
 法57条 名称等を表示すべき有害物質
 法第57条の2 通知対象物 政令番号第529号
 特化則 特定第2類および特別管理物質
消防法 法別表危険物 第4類第1石油類 非水溶性(指定数量 2001)
高圧ガス保安法 一般則第2条 可燃性ガス、毒性ガス
船舶安全法
 危規則第3条 中引火点引火性液体(クラス3)
航空法 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
令別表第1   C類物質(有害液体物質)
令別表第1の3 (引火性物質)
大気汚染防止法 有害大気汚染物質(指定物質)
法第17条特定物質、令第10条記載の物質
水質汚濁防止法 法第2条、令第2条に記載の物質
令別表1 特定施設

16.その他の情報

文献

  1. IARC Monographs, Vol. 29 1982
  2. Patty's Industrial Hygiene and Toxicology (4th revised edition) 1994
  3. 後藤稠他編:産業中毒便覧(増補版)医歯薬出版 P. 531 1981
  4. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Supplement 6 1987
  5. Oak Ridge National Laboratory: Toxicological Profile for Benzene P. 15 May 1989
  6. Ethyl Browning's Toxicity and Metabolism of Industrial Solvents, 2 nd ed. Vol.1: Hydrocarbons 1987
  7. J. Toxicol. Environ. Health 16, 673-678 1985
  8. Proc. Natl. Acad. Sci. 83, 8356-8360 1986
  9. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Supplement 7 120-122 1987
  10. NTP: Fourth Annual Report on Carcinogens Summary 1985
  11. R. D. Meyerhoff: J. Fish. Res. Bd. Canada 32 (10), 1864 1975
  12. S. Galassi et al.,: Ecotox. & Environ. Safe. 16, 158-169 1988
  13. A. Moles et al.,: Trans. Am. Soc. 108 (4), 408 1979
  14. J. H. Carton et al.,: Hydrobiologia 59 (2), 135 1978
  15. P. B. Kauss et al.,: Environ. Pollut. 9 (3), 157 1975
  16. 通産省公報 昭和54年12月25日
  17. Chemosphere 17 (8), 1551-1574 1988
  18. Chemosphere 17 (1), 22-34 1988
  19. IPCS Environmental Health Criteria 150, 1993
  20. 化学物質ハザード・データ集 第一法規(1997)
  21. 化審法既存化学物質安全データ集 通産省(1992)