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血管の細胞構造にそっくりの生体材料を開発
東京大学大学院工学研究科教授 石原一彦先生

 生物には、体内に異物が侵入すると、排除しようとする免疫システムが働きます。これは生体の自己防衛機能とも言えるものですが、人工臓器や体内埋め込み型の医療器具を開発する際には、つねにこの問題を考慮しなければなりません。
 この課題を解決したいと考えた石原先生は、血管の細胞構造に着目しました。血管は3層の膜構造となっていて、血液と接している一番内側の内皮細胞の表面はリン脂質に覆われています。石原先生は、このリン脂質の構造を詳しく調べ、同様の化学構造をもつ高分子、MPC樹脂*の合成に成功したのです。
 MPC樹脂は、生体の細胞膜を模倣した構造をもつ合成ポリマーなので、安全性が高く、生体内での安定性もすぐれ、また、生体の防御システムをかいくぐることができます。この特性を活かし、直径わずか2・という世界最小口径の人工血管や、腎臓病患者用の人工透析膜、糖尿病患者用の人工腎臓の開発も手がけられています。また、新エネルギー・総合産業技術開発機構(NEDO)の開発プロジェクトの一環として、体内埋め込み型の人工心臓の開発が進められています。
 MPC樹脂は、他の樹脂や金属などと組み合わせて利用することも容易で、医療以外でも幅広い応用が考えられています。
(写真提供:マック・フォトリサーチ)


MPC樹脂でつくられた人工心臓の一例。体内埋め込み型人工心臓
(写真提供:マック・フォトリサーチ)

*MPC樹脂=正式名称は2-メタクリロイルオキシエチル・ホスホリルコリンポリマー。
アクリル樹脂をベースに、ポリマー構造の一部を、生体膜を構成するリン脂質と
まったく同じ構造におきかえたもの。